都会の片隅で生きている兄と妹。兄を深く愛していた妹は、兄が記憶喪失になったとき、恋人になりすました。こうして始まった二人の関係は永遠に続くかに思えた。しかし、兄の記憶が戻ったとき……。こんな兄と妹の想いが交差する映画「三月のライオン」。 約30年の時を経て、デジタルリマスター版となって甦った同作について、矢崎仁司監督に訊くインタビューの第二回へ。 あの頃、僕は性器をめぐる冒険の三部作を作るようなことを言っていたらしい 今回は、その物語の成り立ちの話から。デビュー作『風たちの午後』を経て、次に向けて矢崎監督はこんなことを考えていたという。 「『風たちの午後』で主演を務めてくれた綾せつこさんが、『スティルライフオブメモリーズ』(2018年)を観てくれたあとに、僕に言ったんです。『おめでとう、あの時、矢崎さんがやろうとしていたことがやっと完結できたね』と。 僕はすっかり忘れていたんですけど、 当