ディストピアを語る理由は、ディストピアのありさまをこと細かに語るとディストピアの到来を阻止できる可能性があるからです。これは人類のある種の知恵なんだと思います。 「ディストピアもの」が書かれ出したのは20世紀に入ってからです。オルダス・ハクスリーの『すばらしい新世界』とかジョージ・オーウェルの『1984』とかがたぶん最初です。でも、ディストピアSFが大量生産されたのは1950年代、60年代のアメリカです。その頃に大量生産されたのは、米ソの間で核戦争が起きて、世界が滅びるという話です。わずかなヒューマンエラーによって核戦争が始まり、文明が消滅する。そういう話です。映画であれ、テレビドラマであれ、漫画であれ、小説であれ、膨大な数のディストピアムが書かれました。 僕はSF少年だったのでその頃にリアルタイムで大量のSFを読みました。『博士の異常の愛情』とか『未知への飛行』とか『猿の惑星』とか世界が