並び順

ブックマーク数

期間指定

  • から
  • まで

1 - 35 件 / 35件

新着順 人気順

土記の検索結果1 - 35 件 / 35件

  • 土記:ウクライナ即時停戦再論=伊藤智永 | 毎日新聞

    <do-ki> 国際法も人権も踏みにじるロシアのウクライナ侵攻から1年半。米紙ニューヨーク・タイムズが先週、両軍のこれまでの死傷者は計50万人近くに上るとの推計を報じた(本紙21日付朝刊国際面)。平均して毎日900人以上だ。 内訳は、ロシア側が死者12万人、負傷者17万~18万人。ウクライナ側が死者7万人、負傷者10万~12万人。兵力見積もりは、ロシアが民間軍事会社を含めて約133万人、ウクライナが民兵組織も加えて約50万人。とするとウクライナは、すでに兵力の3分の1が死傷していることになる。 ゼレンスキー大統領は西側諸国に「もっと戦闘機、戦車、弾をくれ」と要求するが、そもそも兵器を使って戦える兵士が足りるのか。18~60歳の男性は徴兵の対象で、原則出国禁止。最近は軍隊経験のない病弱な50歳代でも、前線へ送られているようだ。

      土記:ウクライナ即時停戦再論=伊藤智永 | 毎日新聞
    • 土記:安倍さんだったら症候群=伊藤智永 | 毎日新聞

      <do-ki> 知る人ぞ知る政界のタニマチ(酒食をおごる大金持ち)が、退陣後の安倍晋三元首相を高級料亭で慰労したそうな。「元秘書官たちも連れて行きたい」と主賓が希望し、歴代最長政権を支えた名だたる官邸官僚たちも陪席した。 うたげの後、タニマチ氏抜きで「チーム安倍」の記念写真を撮ったら、1人がさっと列を離れ、他もうつむいたり、そっぽを向いたり、正面を向いているのが安倍氏だけの変な写真になった。 「仲悪かったんだね。個別に安倍さんとつながっていたんだ」

        土記:安倍さんだったら症候群=伊藤智永 | 毎日新聞
      • 土記:憲法改正に必要なのは=伊藤智永 | 毎日新聞

        <do-ki> 憲法記念日の3日、憲法改正に関する各紙世論調査の数字は一見バラバラだった。単純に改憲賛成を比べると、毎日新聞の27%に対し、読売新聞では63%。回答者が社論の違いに合わせたのでは、といった勘ぐりは誤りだ。質問を子細に読み比べると、むしろ明確な世論の姿が立ち現れる。 読売は、単刀直入に…

          土記:憲法改正に必要なのは=伊藤智永 | 毎日新聞
        • 土記:岸田メシ、うまいのか=伊藤智永 | 毎日新聞

          <do-ki> 県議会議長だった故人の家で、大掃除を手伝ったことがある。事務所代わりだった広い酒蔵に、ゆうに1000を超える湯飲みや食器が何台もの棚にぎっしり収まり1週間かけても片付かなかった。 往年は選挙の度に千客万来。常に酒と食べ物を用意し、自由に飲み食いさせていたという。手伝ってくれる近所の人たちに、三度の食事も出さねばならない。 資金は元議長の老妻が、地場産品の商いで捻出。「稼いだお金は全部選挙に使っちゃった。赤ら顔であちこちの候補者宅を渡り歩き、くだを巻く人たちにはうんざり」とこぼしていたそうだ。

            土記:岸田メシ、うまいのか=伊藤智永 | 毎日新聞
          • 土記:ジャニーズ帝国と沈黙=伊藤智永 | 毎日新聞

            <do-ki> ジャニーズタレントの顔と名前も一致するかおぼつかない者にとって、事務所創業者の性加害事件は、その期間・規模・内容に今更驚くばかりだが、「マスメディアの沈黙」も温床だったと指弾されれば、取材分野は違っても記者の一人として考え込まされる。 芸能界は特殊だからとか、人の性的指向に口は出せないといった遠慮を超えて、芸能メディアには打算やそんたくがあっただろう。それでも、出版メディアは創業者の異常性について半世紀前から何度も警告していた。新聞は追及しなさすぎたが、裁判の判決はその都度報じている。しかし、それでは事件を止められなかった。 …

              土記:ジャニーズ帝国と沈黙=伊藤智永 | 毎日新聞
            • 土記:サイードはもういない=伊藤智永 | 毎日新聞

              <do-ki> 米ハーバード大学のパレスチナに連帯する学生団体が、イスラム組織ハマスの攻撃は全面的にイスラエルに責任があるとの声明を出したら、30以上の学生団体が賛同した。これに大富豪の企業経営者らが「名前を明かせ。彼らを絶対に雇わない」と反発。政治家も同調する騒ぎとなり、大学当局はハマスのテロ非難声明を出すなど火消しに追われた。9・11米同時多発テロの後、イスラム非難一色になった世相をほうふつさせる。 米世論調査機関「ピュー・リサーチ・センター」によると、米国人全体ではパレスチナよりイスラエルへの好感度が高いが、30歳未満の成人では近年、その傾向が明らかに逆転していたそうだ。

                土記:サイードはもういない=伊藤智永 | 毎日新聞
              • 土記:安倍派バブルの崩壊=伊藤智永 | 毎日新聞

                <do-ki> 派閥の会長でもないのに、個人で政治資金パーティー収入が突出している現役議員と言えば、自民党の武田良太元総務相(二階派事務総長)と地域政党「新党大地」代表の鈴木宗男参院議員が双璧だろう。鈴木氏に話を聞いた。自民党時代は、小渕恵三、橋本龍太郎両元首相が会長の平成研究会(現茂木派)幹部だった。 「政治家個人のパーティーは、支援者に広く薄く参加してもらう機会。政党のパーティーも政策を訴える場。どちらも意味があるが、派閥まではやりすぎだ」

                  土記:安倍派バブルの崩壊=伊藤智永 | 毎日新聞
                • 土記:マイクを切ったのは=伊藤智永 | 毎日新聞

                  <do-ki> 水俣病患者・被害者らの発言中、環境省職員によってマイクの音が切られた出来事から2週間。ずっと考えている。自分は何に苦いものを感じたのだろう。 5月1日は、68年前に水俣病が公式確認された日。熊本県水俣市で営まれた犠牲者慰霊式に伊藤信太郎環境相も出席し、患者・被害者との懇談に臨んだ。 思い浮かんだのは、ある官僚の死である。1990年12月、当時の環境庁長官が11年ぶりに水俣病の現地視察へ向かった日、環境庁事務方ナンバー2の山内豊徳氏が東京の自宅で自殺した。 患者・被害者が行政や企業の責任を問う裁判で、東京地裁が和解を勧告。熊本県や企業は応じようとしたのに、国は拒んだ。山内氏は責任者として弁明に追われ、長官の現地入りも回避すべく奔走していた。「板挟みになったか」と報じられ、是枝裕和氏が映画監督になる前、テレビドキュメンタリーにしたことがある。

                    土記:マイクを切ったのは=伊藤智永 | 毎日新聞
                  • 土記:世襲政治が極まると=伊藤智永 | 毎日新聞

                    首相の通算在職日数が憲政史上最長となり、記者団の質問に答える安倍晋三首相(当時)=首相官邸で2019年11月20日、川田雅浩撮影 <do-ki> 安倍晋三氏がもう一度首相になろうと決意したのは、第1次内閣を1年で放り出してから5年後。身内や後援者ですら「まだ早い」と止めたのに、2012年自民党総裁選に名乗りを上げ、下馬評を覆して逆転勝ち。歴代最長政権はそこから始まった。 常識では推し量れない再登板への執念。安倍氏は祖父・岸信介元首相の無念を、何度も自らに言い聞かせていたに違いない。繰り返し読んでいた原彬久編「岸信介証言録」で、岸は語っている。 「もう一遍私が総理になってだ、憲法改正を政府としてやるんだという方針を打ち出したいと考えた。ひそかに政権復帰を思ったことは随分ありましたよ」

                      土記:世襲政治が極まると=伊藤智永 | 毎日新聞
                    • 土記:松野官房長官に尋ねたい=伊藤智永 | 毎日新聞

                      <do-ki> 関東大震災後の東京再建はめざましく、6年半後には帝都復興祭が行われ、諸外国を驚嘆させた。ところがその15年後、東京は米軍の大空襲により再び廃虚と化す。天災から戦災(人災だ)へ。その間の短さは何を意味するか。 復興祭の約半年後、震災を耐え抜いた東京駅で浜口雄幸首相が右翼に襲われた。それを皮切りに1930年代、東京ではテロやクーデターが相次ぐ。並行して大陸への侵攻が進められ、日中戦争の泥沼化は日米開戦を招いた。 いかに国家や民族の大義を掲げようと、戦争は究極のところ、日常からいきなり兵士に仕立てられた普通の人々が、明日から人殺しを命じられる権力の強制である。人々が「自分も人を殺せる」と信じるには、日常の中で暴力への拒否感を摩滅させる「訓練」期間が必要だったに違いない。

                        土記:松野官房長官に尋ねたい=伊藤智永 | 毎日新聞
                      • 土記:森喜朗氏が語るとき=伊藤智永 | 毎日新聞

                        <do-ki> 今や岸田文雄政権がどうなるかより、自民党はどうなるのかに人々の関心はある。「悪夢のような民主党政権」と繰り返した安倍晋三元首相の言葉が、ブーメランとなって自民党に返ってきた。 旧統一教会問題や政治資金パーティー問題が安倍氏の死後、釜のフタが開いたように噴き出したのは偶然と思えない。「安倍さんが生きていれば」と嘆くファンもいるだろうが、その安倍氏本人がフタだったなら、話は逆だ。 安倍時代は派手なスローガンと外交、総裁選を含む毎年の選挙で人々を飽きさせない「イベント政治」だった。祝祭気分を楽しんだ人も多かったから、辞める時は支持率が驚くほど上昇し、「安倍さん、ありがとう」の感謝ムードで写真集も売れた。

                          土記:森喜朗氏が語るとき=伊藤智永 | 毎日新聞
                        • 土記:池田大作氏の思い出=伊藤智永 | 毎日新聞

                          <do-ki> 亡くなった池田大作創価学会名誉会長に一度だけ会ったことがある。当時30代。困難を承知で池田氏への直接取材をあれこれ仕掛けていたら、本紙コラムニストの故岩見隆夫氏が聞き手となるのを条件に、インタビューが実現した。名刺を渡すと「ずいぶんご熱心で」と言われ、副会長の一人が「一生の勲章ですね」と笑った。握った手はとても柔らかかった。 担当でもない創価学会を取材し始めたのは、それより10年以上前。担当だった公明党取材に行き詰まったからだ。当時の故市川雄一書記長は、朝日新聞、共同通信、NHK以外は冷遇すると広言。苦し紛れに支持母体へ回り込んだのだ。記者に限らず誰にでも厳しく、若手有望株だった現在の山口那津男代表や北側一雄副代表への指導は特にきつかった。

                            土記:池田大作氏の思い出=伊藤智永 | 毎日新聞
                          • 土記:出版を断られた名作=伊藤智永 | 毎日新聞

                            <do-ki> 石牟礼道子の「苦海浄土 わが水俣病」(1969年)は、初め岩波書店に断られた。理解する編集者がほぼ皆無だったらしい。 熊本県水俣市の一人の主婦が、知人の個人雑誌「熊本風土記」に書き継いだ初稿を、福岡市在住の記録作家が目に留め、これは広く読んでもらうべきだと考えて上京したのに、むなしかった。 出版を決めた講談社の編集者・加藤勝久氏は「学者の本、東京の人間の本は出さない」が口癖で、新しい書き手を発掘すると、席の後ろの白地図に赤ポチを書き込んでいた変わり種。後に黒柳徹子さんに「窓ぎわのトットちゃん」を書かせた目利きだった。

                              土記:出版を断られた名作=伊藤智永 | 毎日新聞
                            • 土記:ドンのトンネル政治=伊藤智永 | 毎日新聞

                              <do-ki> 地元で「青木トンネル」と呼ばれていた。高速道路・山陰自動車道の島根県出雲―宍道IC間にある仏経山トンネル。2000年代初め、そこから東へ延びる区間の工事は、青木幹雄氏(当時自民党参院幹事長)が、かつて秘書として仕えた竹下登元首相(00年死去)から引き継いだ地元土建会社に細かく割り振られていた。 どの入札も落札率98%。参加業者は入札の5年前から、自民党の政治資金団体「国民政治協会」と県支部に毎年献金し、総額は判明分で1億6000万円超。協会は、一部有力議員に迂回(うかい)献金を仲立ちするトンネルでもあった。

                                土記:ドンのトンネル政治=伊藤智永 | 毎日新聞
                              • 土記:「安倍回顧録」の読み方=伊藤智永 | 毎日新聞

                                <do-ki> もう書いてもいいだろう。2月に出た「安倍晋三回顧録」(中央公論新社)は期待外れだった。故人の語りがふんだんに収録され、ファンの感激は理解できる。でも、大半は聞いたことある主張の総集編である。本当はこんな人だったのか、こんな真相があったのか、といった発見は乏しい。 オーラルヒストリー(口述史)の金字塔「岸信介証言録」(毎日新聞社刊・現中公文庫)を編んだ政治学者の原彬久(よしひさ)さん(83)に頼んで読んでもらった。「力作だけど、整然としすぎていますね。私とは手法も狙いも違う」。我が意を得たりと相づちを打った。 「安倍回顧録」のミソは、「北村滋監修」の特異さにある。元警察官僚の北村氏は、第1次内閣の首相秘書官、第2次内閣以降も内閣情報官や国家安全保障局長として終始仕えた側近中の側近。

                                  土記:「安倍回顧録」の読み方=伊藤智永 | 毎日新聞
                                • 土記:目白御殿焼失=伊藤智永 | 毎日新聞

                                  田中角栄元首相の旧邸宅で起きた火災で焼けた建物=東京都文京区で2024年1月9日午前9時47分、本社ヘリから宮武祐希撮影 <do-ki> 東京・目白の田中角栄元首相邸が焼失した。線香の失火が疑われているという。気の毒な災難にお見舞いの同情を禁じ得ない。 それにしても自民党が政治資金パーティー裏金事件に窮する折も折、よりによって金権政治の牙城だった歴史的建造物が灰じんに帰するとは、できすぎた暗合ではないか。あくまで虫の知らせの類いだが、これはマツリゴトの神様が、何か大事なサインを送っているのではあるまいか……。 為政者は、居宅の地名で呼ばれてひとかどの権力者となる。竹下登元首相が東京・代沢の旧佐藤栄作邸に住み続けたのは、師と仰ぐ大宰相の名跡を継いだ証しのためだった。首相辞任後の岸信介元首相が静岡県御殿場市に邸宅を新築したのは、隠居後も神奈川県大磯町に君臨した政敵・吉田茂元首相が死去した直後だ

                                    土記:目白御殿焼失=伊藤智永 | 毎日新聞
                                  • 土記:だからロシアと外交を=伊藤智永 | 毎日新聞

                                    ロシアから帰国後、記者団の取材に応じる日本維新の会の鈴木宗男氏=参院議員会館で2023年10月5日午後4時54分、竹内幹撮影 <do-ki> まだ首相官邸が戦前からの古い建物(改装して現在は首相公邸)だった頃、首相や官房長官が在室中、番記者はドアの前の廊下で来客の出入りを見張っていた。 ある日、野中広務官房長官(小渕恵三政権)の複数いる秘書官のうち1人が、そっと部屋を出た。いつもの重厚な黒の書類カバンでなく、無地の小さい紙袋を手に提げているのが気になり、後を追う。話しかけても上の空である。玄関を出るとき「ついて来ないでください」と軽くにらまれた。普段と様子が違う。尾行したら、議員会館の一室に消えた。 数週間後、官邸に現れたことのない野党議員が官房長官室に入った。北朝鮮へ行った報告だという。ピンときた。秘書官が訪ねた部屋の議員じゃないか。すると、あの紙袋の中身は……。

                                      土記:だからロシアと外交を=伊藤智永 | 毎日新聞
                                    • 土記:もう一つの8月6日=伊藤智永 | 毎日新聞

                                      <do-ki> 明日は広島原爆忌。地元選出の首相が式典で「被爆の実相」「記憶の継承」「核廃絶」など正しい決まり文句を並べ、主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)開催の政治的意義を誇るのだろう。 地霊という言葉がある。土地の記憶がもたらす霊感によって、今と向き合い、未来の可能性を切り開くと考える。広島の地霊は変質した。いや、衰弱した。 「もっと爆弾よこせ」と威嚇する外国の戦時大統領が来訪すれば歓迎し、原爆マンガの古典を教育の場から排除し、広島湾の向こうに使用済み核燃料の保管場所が造られようとしてもどこか人ごと。地霊は政治の要請で次々と上書きされてきた。政治と距離を置こうとすると、かえって政治の野蛮な力に組み敷かれていく。

                                        土記:もう一つの8月6日=伊藤智永 | 毎日新聞
                                      • 土記:安倍拉致3原則の限界=伊藤智永 | 毎日新聞

                                        <do-ki> 20年ぶりの日朝首脳会談はあるか。岸田文雄首相は北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記に「共に新しい時代を切り開くため、条件を付けず直接向き合いたい」と呼びかけてきた。2月、総書記の妹の金与正同党副部長が「関係改善の新たな政治決断をするなら、新しい未来を共に切り開ける」と異例の談話で応じた。その後、表の応酬はあっても、水面下でただならぬ動きが進んでいる模様だ。 27日、国会内の大会議室で「拉致問題の行き詰まりを破るカギは何か」を考える集会があった。ロシア近代史と現代朝鮮が専門の和田春樹東京大学名誉教授(86)が呼びかけ、国会議員や識者、報道関係者ら100人以上が参加。

                                          土記:安倍拉致3原則の限界=伊藤智永 | 毎日新聞
                                        • 土記:岸田さんにお薦めの一冊=伊藤智永 | 毎日新聞

                                          <do-ki> 首相が休暇の前に書店で本を買い込み、その中の数冊だけ書名を公表すれば、単なる趣味の問題とは受け取られない。岸田文雄氏は昨年冬もこの夏も、村上春樹氏の小説を選んだ。ファンだったとは意外、大衆性を印象づけたいのかな、という素直な見方をよそに、政界では「早稲田愛のアピールだよ」と解説される。 首相と作家は共に早稲田大学卒。一方で首相は、自民党最大派閥の安倍派に依然にらみを利かせる森喜朗元首相、第3派閥・茂木派の参院グループに「当面は岸田しかいない」と遺言したとされる故青木幹雄元官房長官から、早大OBの縁で支持を取り付けてきた。人気作家の話題作も、政権基盤固めの思わせぶりな符丁というわけだ。こじつけすぎ?かもしれない。だとしたら岸田さん、本当にハルキストなんですか。

                                            土記:岸田さんにお薦めの一冊=伊藤智永 | 毎日新聞
                                          • 土記:特捜世直し幻想=伊藤智永 | 毎日新聞

                                            <do-ki> 東京の某私大で法学部生30人に「リクルート事件って聞いたことある人」と尋ねたら、挙手したのは5人。「内容も知っている人」と聞いたらゼロ。生まれる15年以上前のことだから当然か。 別の事件で、金丸信元自民党副総裁の事務所から東京地検特捜部が巨大な金庫を運び出すニュース映像を見せたら、教室中が息をのみ固まっている。「金丸」の名前を知っていた学生はゼロ。全員が最も若い有権者である。 政治資金パーティー裏金事件は、捜査着手時「リクルート以来の大疑獄」という触れ込みだったが、刑事処分が出た後の風景はだいぶ違う。自民党が長年、広く組織的に腐っていたのに、起訴・略式起訴されたのはほぼ無名の3議員と派閥事務員や秘書だけ。

                                              土記:特捜世直し幻想=伊藤智永 | 毎日新聞
                                            • 土記:オオタカは巣立った=伊藤智永 | 毎日新聞

                                              <do-ki> 東京・新宿から電車で15分の住宅街に広がる井の頭恩賜公園で、先ごろ野生のオオタカが1羽巣立った。春、雑木林に架けられた巣でヒナがかえって以来、多い時は十数人の愛鳥家たちが日々、その成長を見守ってきた。 散歩の途中そっと近づき、一緒に黙って高い木のてっぺんの小さな鳥影を探して、ああ今日もいるとうなずき合うのが、いつしか朝の習慣になった。名前も知らない者同士、一つの命の無事を確かめ合うだけの淡い人の輪は、ほどほどの信頼感が好もしい。 取材したら、皇居や明治神宮など都心の小さな森にも、数年前からオオタカやハヤブサが生息しているという。それどころか里山の減少で「準絶滅危惧種」に指定されているオオタカは、都会にジャングルよろしく林立する超高層ビル群を今や格好の営巣地としているらしい。かつて東京上空の覇権を握っていたカラスが、ゴミ出し対策などによって減った後、入れ替わりに猛禽(もうきん

                                                土記:オオタカは巣立った=伊藤智永 | 毎日新聞
                                              • 土記:宏池会の呪い=伊藤智永 | 毎日新聞

                                                <do-ki> 岸田文雄首相が自民党岸田派(宏池会)の解散を表明した。サプライズだったが、最初はいつも通り「検討使(ます)」と歯切れ悪く、総裁なのに他派閥のことは我関せず。3年間で3000万円も収入を隠していたとバレたら、派閥自体なくしてしまう発想は、パソコンをドリルで壊してしまうのと似ている気もする。 あれこれ腑(ふ)に落ちないが、ともあれ綸言(りんげん)汗のごとし。果たしてこれで政権を延命できるのか。逆に命取りになるかもしれない。

                                                  土記:宏池会の呪い=伊藤智永 | 毎日新聞
                                                • 土記:銃を取れ、命を懸けろ=伊藤智永 | 毎日新聞

                                                  共同記者会見を終え、手を握り合う岸田文雄首相(左)とバイデン米大統領=ホワイトハウスで2024年4月10日、AP <do-ki> 「米国と一緒にいることの覚悟が示された。同盟とは、守るべきものを共に守るために戦うこと。必要なら銃を取ってでも、命を懸けてでも守ることである」 岸田文雄首相の米議会演説と日米共同声明の意味を、杉山晋輔元駐米大使は17日、日本記者クラブでこう解説した。外務省とすり合わせて会見に臨んだというから、政府見解の代弁である。問題は、何をどこまで守るのか。 日本の国土・国民だけでなく、自由と民主主義・市場経済・人権・法の支配といった理念を守るというが、今や米国内でさえ、それらは格差や分断、二重基準や大国の独善によって揺らいでいる。

                                                    土記:銃を取れ、命を懸けろ=伊藤智永 | 毎日新聞
                                                  • 土記:小澤征爾さんの手招き=伊藤智永 | 毎日新聞

                                                    ジュネーブでの復活公演で会場の拍手に応える小澤征爾さん(左から2人目)。右端はビオラ奏者の今井信子さん=ジュネーブで2011年7月3日、伊藤智永撮影 <do-ki> 小澤征爾さんは教えることに情熱を注いだ。スイス・レマン湖畔の町に毎年夏、若い弦楽器奏者を集めた10日間の合宿もその一つ。最終日にジュネーブ市のホールで演奏会を催す習わしだった。 さすがに食道がんの大手術を受けた2010年は休んだが、翌夏はマエストロの復帰を祝う特別の熱気で盛り上がった。ジュネーブ特派員には重大ニュースだ。 演奏会の後、打ち上げ会場のレストランに潜り込み、単独取材を狙った。初対面である。

                                                      土記:小澤征爾さんの手招き=伊藤智永 | 毎日新聞
                                                    • 土記:大震災と民衆暴力=伊藤智永 | 毎日新聞

                                                      <do-ki> 関東大震災の1年後、当時の東京市が刊行した記録文集「十一時五十八分」に、市内の小学校児童らに実施した「感想調査票」の集計結果が載っている。 例えば下谷高等小学校1、2年男子121人(12~14歳)が答えた「一番恐ろしかったこと」の1位は、「流言(鮮人の)」で24人(「鮮人」は戦前の朝鮮人に対する蔑称)。2位の「火事」10人、「地震」「旋風」各8人より随分多い。他の学校でも「鮮人騒ぎ」が上位に挙がっている。震災後にはやった遊びには「鮮人ゴッコ」という言葉も見られる。 朝鮮人虐殺(中国人や地方なまりの日本人も含む)に関する証言は膨大に収集されているが、とりわけ印象的なのは子供たちが書いた作文だ。多くが朝鮮人そのものより、日本人の普通の大人たちが集団で殺気だった光景への驚きと恐怖をつづっている。

                                                        土記:大震災と民衆暴力=伊藤智永 | 毎日新聞
                                                      • 土記:大軍拡の世に軍縮を探る=伊藤智永 | 毎日新聞

                                                        <do-ki> 戦車や空爆やミサイル発射の映像を見るのが日常になった。今じゃ「核兵器を使った世界紛争が起きるぞ」という大国指導者の威嚇に、またかと驚きもしない。「有事対応だ」と演説されれば、防衛費増も仕方ないなと承服し、この際憲法も変えなきゃと言われると、そんなものかと同意する。 この大軍拡時代に、真剣に軍縮を追求する人たちは、何をどう考えているのだろう。5月11日、東京・三田の慶応大学で開かれた日本軍縮学会をのぞいた。 知人の研究者は「核軍縮に関心があると、左翼なのと敬遠されがちだった」と苦笑するが、会長の青木節子慶大教授は「最近は学生の間でも先進技術の軍事利用や輸出管理問題への関心は高いですよ」という。ちなみに青木先生は宇宙法の第一人者だ。

                                                          土記:大軍拡の世に軍縮を探る=伊藤智永 | 毎日新聞
                                                        • 土記:安倍びいきの引き倒し=伊藤智永 | 毎日新聞

                                                          <do-ki> 安倍晋三元首相が存命だったら、自民党派閥の政治資金パーティー裏金問題はどうなっていただろう。自分は派閥を離れていたので知らなかったが、会長になって政治資金収支報告書に記載しない還流をやめさせた、長年の悪慣行をおわびすると頭を下げて案外乗り切っていたかもしれない。 東京地検特捜部が1月、安倍派・二階派・岸田派幹部の立件を全員見送り、「トカゲのしっぽ切り」で捜査に幕を引いた時、東京地検の新河隆志次席検事が記者会見で奇妙な説明をした。 捜査は、安倍派幹部と会計責任者の職員が共謀して億単位の不記載を続けたとする市民からの告発を受けて行われたと報じられてきたが、特捜部は告発を受理していないので、派閥幹部の立件そのものを見送り、そもそも不起訴処分にもしていないというのだ。

                                                            土記:安倍びいきの引き倒し=伊藤智永 | 毎日新聞
                                                          • 土記:うんざり政倫審=伊藤智永 | 毎日新聞

                                                            参院政治倫理審査会を終え、記者団の取材に応じる自民党の世耕弘成前参院幹事長=国会内で2024年3月14日午前11時54分、竹内幹撮影 <do-ki> テレビで参院政治倫理審査会を視聴し、どっと疲れた。中身のない割にやたら雄弁なしらを切る口上を延々聞かされたからだろう。見せ物にもなってやしない。全部見た人がどれほどいたか。 社説なら「疑問はますます深まった」と怒るのが正しい反応だが、コラムの勝手で言わせてもらえば、もううんざり。自民党幹部に聞くと、週明けの衆院政倫審も「驚く話は出ないよ」。 政治資金パーティー裏金事件のうんざり感は、追及の仕方と別にある気がする。この泥沼をいくらさらっても、ろくなモノは出てこない。多くの人がうすうすそう感じているのではないか。

                                                              土記:うんざり政倫審=伊藤智永 | 毎日新聞
                                                            • 土記:政界七光り族の反抗=伊藤智永 | 毎日新聞

                                                              国会内を歩く自民党の小渕優子選対委員長=東京都千代田区で2024年1月26日午前11時18分、竹内幹撮影 <do-ki> 自民党の派閥「解消」が、妙な雲行きになってきた。解散を決めた安倍派(清和政策研究会)では、福田達夫元総務会長が新グループ設立を予告。解散するか迷う茂木派(平成研究会)からは、小渕優子選対委員長らが相次ぎ脱会し、「いずれ小渕グループに結集か」との観測しきりである。 福田氏は、派閥創始者・福田赳夫元首相の孫。小渕氏も、経世会(竹下派)から平成研に改称した時の会長、小渕恵三元首相の娘。「創業家の坊ちゃま、お嬢さま」が、汚れやしがらみのこびり付いた老舗を畳み、由緒正しい血統継承者として、新ブランドで出直す派閥「再編」というわけだ。もちろん首相をめざすため。 政治資金の裏金汚染は、岸田文雄首相の号令で派閥解消論にすり替わり、派閥リーダーの世代交代へずれてきた。若返りというより家督

                                                                土記:政界七光り族の反抗=伊藤智永 | 毎日新聞
                                                              • 土記:解散の大義あります=伊藤智永 | 毎日新聞

                                                                <do-ki> 衆院解散を巡る政治家の掛け合いは漫才としか聞こえない。 「解散の大義を教えていただければというような感じがしている」(麻生太郎自民党副総裁) 「大義をどこに求めるかは首相が決断されることだと思いますが、ないということはありえません」(森山裕選対委員長) 「大義を考えて解散してる人誰もいないよ。解散の後に大義はついてくる」(古賀誠元幹事長) 首相の専権だから理屈は何だっていい、あってないようなもの。衆院議員を全員クビにし、経費約600億円かけて全国民に投票で重要政治課題への意思を尋ねようかというのに、いま何を聞いたらいいのかねえ、知らないけど首相が何か考えるでしょ、そんなの後で考えればいいんだよ、というのだから、ふざけた話ではないか。

                                                                  土記:解散の大義あります=伊藤智永 | 毎日新聞
                                                                • 土記:敬愛された女性政治家=伊藤智永 | 毎日新聞

                                                                  <do-ki> フランス人女性のシモーヌ・ベイユといえば、日本では20世紀前半の思想家のことだ。哲学教師、工場労働者、スペイン内戦やレジスタンスの闘士を遍歴し、残された十数冊のノートが戦後、「重力と恩寵」と題して出版され、今も熱烈な愛読者がいる。 一方、多くのフランス人が同じ発音の姓名を聞いて思い浮かべるのは、20世紀後半の政治家である(ただし、「ベ」のスペルは、思想家がW、政治家はV)。その不屈の生涯を描いた映画「シモーヌ フランスに最も愛された政治家」が、28日から公開される。 1970年代前半、フランスの世論は人工妊娠中絶の合法化を巡り二分した。この時、司法官から保健相に抜てきされ、法案成立の陣頭に立ったのがベイユだ。

                                                                    土記:敬愛された女性政治家=伊藤智永 | 毎日新聞
                                                                  • 土記:ゴダール没後1年に=伊藤智永 | 毎日新聞

                                                                    <do-ki> 映画作家のジャンリュック・ゴダールが昨年9月、スイスでは合法な自殺ほう助で亡くなった時、三島由紀夫を連想した。共に人生と作品が一体化し、創作活動の延長のように生涯を終えた。色つきメガネの男が、透かし見ていたフィルムにパチンとはさみを入れる。そんな姿が思い浮かんだ。 ゴダール映画は難解だと敬遠される。時間も物語もバラバラに切り刻み、順序を入れ替えてつなぎ合わせ、それどころか音やせりふまで途切れたり重ねたりしているのだから、娯楽と油断している人が面食らうのは当然だ。 でも、決めつけを拭った目で向き合えば、自分は何を見たんだ、映画を見るとはどういうことだ、そもそも映画って何だ、そんな問いが渦巻き、とんでもないものを見たという興奮を味わえます。

                                                                      土記:ゴダール没後1年に=伊藤智永 | 毎日新聞
                                                                    • 土記:ある保守思想誌の終刊=伊藤智永 | 毎日新聞

                                                                      <do-ki> ロシアのウクライナ侵攻が3年目に入った。出口は見えない。2年前、即時停戦論を「不正義だ」とののしった人たちの「正義」は今、どこを漂うか。 イスラエルのガザ侵攻は、自衛を超えた無差別虐殺をやめない。それでも、イスラム組織ハマスの奇襲を「許しがたい不正義」と憤った人たちが、法外な「正義」の過剰には沈黙する。 正義感は、それまで安住していた社会と秩序を疑わない態度に根ざす。社会正義を求めるあまり、人や自然のあるべき姿から遠ざかる経験は珍しくない。

                                                                        土記:ある保守思想誌の終刊=伊藤智永 | 毎日新聞
                                                                      • 土記:戦う覚悟と戦わない決意=伊藤智永 | 毎日新聞

                                                                        <do-ki> 台湾を訪れた自民党の麻生太郎副総裁が「抑止力を機能させる覚悟が求められている。戦う覚悟だ」と演説してギョッとさせた。直後に日中の岸田文雄、李強両首相が9月上旬、インドネシアで初の首脳会談を行う予定も明らかになった。麻生発言は、首相官邸や外務省とすり合わせた計算ずくの対中メッセージなのだろう。 かつて書いた外交文書公開の記事を思い出す(2000年5月29日付朝刊)。麻生氏の祖父・吉田茂元首相は言わずと知れた反共親台派だが、冷戦期の1960年代、国交のなかった中国共産党政府とも民間貿易をテコに交流を拡大する現実主義外交を推進した。

                                                                          土記:戦う覚悟と戦わない決意=伊藤智永 | 毎日新聞
                                                                        1