アール・ヌーヴォーの時代、まるで伝染性の熱病に罹ったように、欧米では有機的形態の装飾デザインが同時発生した。1895年、パリにS・ビングがアール・ヌーヴォーの名の由来となる「メゾン・ドゥ・ラール・ヌーヴォー(Maison de l'Art Nouveau)」という美術店を開設する。そして、メトロのデザインで知られるギマールが有名な「カステル・ベランジェ」を建てたのが1894~98年だ。 1896年、ドイツのアール・ヌーヴォー運動「ユーゲントシュティール」の名の由来となる同名の雑誌が創刊する。ベルギーではオルタ、アメリカではサリヴァンが植物文様を大胆に使った建築をつくり、オーストリアではゼツェッシオンと呼ばれる運動が起こり、建築家ワーグナーやホフマンが活躍する。イギリスではアール・ヌーヴォー運動に先立ちアーツ&クラフツ運動が起こり、やはり有機的形態をデザインに採り入れていた。有機的形態と言え