桐野夏生の『OUT』を最初に取り上げたのは、この作品が拙著『〈郊外〉の誕生と死』(青弓社)の上梓とほぼ同時に刊行されていることに加え、私が本連載の「序」で示した八〇年代に顕著になり、九〇年代に入って定着した郊外の風景やファクターが出揃い、『OUT』という物語のフレームとバックヤードを形成しているからである。それはまったく同世代の桐野と私が同じ問題意識を共有しながら、やはり同じ時期に郊外をテーマとする小説と評論を書き続けていたことを意味していよう。 その事実はともかく、桐野の『OUT』において前提となっているのは、タイトルにこめられているように、まさに郊外が「OUT」の空間を表象していることだ。この英語の副詞の「OUT」は多くの意味を含んでいるにしても、ここでは「外れて」「狂って」「間違って」といった訳語と解釈を採用すべきだろうし、それは物語と登場人物たちにもそのまま当てはまるものである。そ