太平洋戦争の終結から数年後、南洋の孤島から日本に生還した沖縄出身の女性。日本の敗戦も知らず、32人の男性兵士とジャングルで暮らしていたという身の上は、世間に大きな衝撃を与えた。しかもその間も12人が命を落とし、うち数人は彼女をめぐって殺害されたという。想像を絶する過酷な状況のなか、生き抜くことを決意した彼女が選んだ生き方とは――。 (前後編記事の前編・「新潮45」2005年8月号特集「昭和史七大『猛女怪女』列伝」掲載記事をもとに再構成しました。文中の年齢、年代表記は執筆当時のものです) *** 【写真】喜びと緊張が混じった表情で前を見据え…アナタハンから救助された際の比嘉さん 帰国後のおだやかな表情も 「女王蜂」の生還 「帰ってください! お話しすることは何もありません。私の知る和子さんは近所の子供たちから『カズおバア、カズおバア』と慕われた優しい女性でした。もう、帰ってください」 今年(