アンナ・サワイは「死」の前に、モーツアルトを聴いたという。 それはドラマ『SHOGUN 将軍』の重要なシーンだった。サワイが演じたのは、高貴な出自でありながら謀反人の娘という宿命を背負わされた女性、戸田鞠子だ。戸田はそれが死刑宣告に等しいと知りながら、狡猾な石堂和成(平岳大)に猛然と食ってかかり、壮絶な最期を遂げた。 その大事なシーンに備えて、サワイはモーツアルトのレクイエムのなかの「ラクリモーサ」を聴いたと語る。 「本当に気持ちを高めてくれる曲で、パワーをもらいました」と彼女は言う。そして、そのエピソードの監督を務めたフレデリック・E・O・トーイについてはこう続けた。 「フレッドが何度も私のところに来て、『もう2~3テイク撮れるかい?』と確認したのを覚えています。私の答えは、『もちろん、大丈夫よ。今日は調子がいいし、やりましょう』でした」 封建時代の日本を舞台に、ジェームズ・クラヴェルに