インターネット時代における灰色文献の動向について,灰色文献の定義の変容,灰色文献資源の政策策定に関するピサ宣言の2つの視点を中心に,さまざまな角度から考察する。まず,灰色文献の定義について整理する。次に,定義に関連して,インターネット時代における灰色文献の現状や課題について触れる。最後に,2014年に公表された,灰色文献資源の政策策定に関するピサ宣言を取り上げ,灰色文献をめぐる最新の動向について紹介する。 2014年12月に米国議会図書館で開催された第16回灰色文献国際会議の中で,イタリア上級衛生協会のPaola De Castroは,灰色文献を次のように言い表した。 「『灰色文献』は,出版物のシンデレラのような存在。価値があるのに,灰をかぶっている」 この灰かぶりというフレーズは,価値があることはわかっていてもそれ自身を見つけることが困難であるという,灰色文献の特性をうまく表現している。