蓮實重彦は1970年代においてすでにママレモンの商品名に反対する投書を考えていた…金井美恵子のほうが鷹揚な態度を示しているのも興味深い(現代詩手帖1979年11月号) https://t.co/1Vabce7foU
放射光 高速の 無言の 粒子の群が 強力な磁場で 曲げられる時 ささやき交わす (…、ああ、ああ、〝私〟は… 層状に重なる声は 青白い放射光となり 巨大な輪の中心にそびえる 鳥居を 浮かび上がらせる ***** 宇宙のどこか遠い涯から飛んでくる無数の粒子を、私たちは浴びながら暮らしています。 私たちの身体をすり抜ける粒子群。 それを曲げてしまうほどのものが、もし私たちの身体のなかにあるとしたら。 それが聳え立つほどの大きさの、鳥居なのではないかと思いました。 そんな思いを書いてみた詩です。 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 暖淡堂書房 Amazon dantandho にほんブログ村 ランキング参加中詩 ランキング参加中雑談・日記を書きたい人のグループ
風にしなる 枝も葉も 何もかも 落としてしまった 竹のような男が 風に吹かれ しなる しなる 風を切る音を あたりに 撒き散らして 足を地面に踏みしめて しなる しなる 湿った 雨をはらんだ風に 煽られて 太い うなり声を 吐きながら しなる しなる しなる 枝も葉も 何もかも 落としてしまった 竹のような男が 地面を踏みしめ 雨に濡れ 風に煽られて ただ、しなる しなる しなる ***** 折れないし、倒れない、そんな男のイメージです。 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 暖淡堂書房 Amazon dantandho にほんブログ村 ランキング参加中詩 ランキング参加中雑談・日記を書きたい人のグループ
駆け出す 不意に、駆け出すには ちょうどよい季節になった かもしかや若い鹿のようには もう駆けられないけど むしろよたよたと だらしがないくらいだけれど 不意に駆け出すには ちょうど、よい季節になった 雨空を見上げ、吐息をつき 駆け出すには ***** 年齢なりの体力で、身体の底から湧き上がる衝動に身を任せてみるのもよいと思います。 何ができるにしても。 それは自分の身体全体の輪郭にちょうど合ったもの。 それを知るのに、遅すぎることも早すぎることもないですね。 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 暖淡堂書房 Amazon dantandho にほんブログ村 ランキング参加中詩 ランキング参加中雑談・日記を書きたい人のグループ
ただ待っている 寒いけど ただ待っている きっと 風が もう一度 吹く ***** 「ただ待っているだけではだめだ」 そんな声が、いろんなところから聞こえてきます。 「受け身でいてどうする、自分から動かないと何も得られないぞ」 そう言われても、自分からは動けないタイミングというのもあるもので。 待つ、というのが、いつでも必ず受け身なのでしょうか。 待つためには、あれもこれもやらずに、ここで立ち止まるという、結構重要な判断をしている訳で。 その判断は、自分自身で責任を負わざるを得ない重たい決心な訳で。 だから、待つことが、ただ受け身だから、それではだめだ、と言われるのは、なんだか違う気がします。 状況によっては、待てる人こそが強い気持ちを持っているのではないか。 そう思ったりします。 皆様、どんな休日を過ごされたでしょうか。 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群
灯 雪、の夢をみた 少年は膝を抱えて 窓際にうずくまっていた そこが一番暗いことを知っていたから 少年の祖母は ストーブの上で 干し芋を焙っていた 猫は丸くなって寝ていた 外は吹雪いている 父も母もまだ帰らない * 目覚めると、まだ雨が降っていた * ああ、あの家に、灯がともる頃だ ***** 自分の暮らしは、長く長く続く旅のようなものだと思うことがあります。 旅立ったところに、もう戻ることのない。 自分が生まれ落ちたところから、南に進んだ距離、北に進んだ距離、東に進んだ距離、西に進んだ距離、それぞれ、かなりの値になると思いますが、それらを全部ベクトルで足し合わせると、結局は、生まれ落ちた場所から、今いるところまでまっすぐに伸びた一本のベクトルになってしまうわけで。 このベクトルの長さをゼロにするのが当面の夢の一つではあります。 つまりは、生まれ落ちたところに戻る。 いつのことになるでしょ
まだまだ たった一度 負けたって 勝つことが なくなった訳じゃない いっそきれいに負けて 次を考えたらいい 次も勝てないかもしれないけど 闘ってみた回数は一度増える いっそポイント制にして 節目には自分に 何かおごってやったらいい ***** いくつになってもうまくいかないことが多いもので。 それでも諦めないことが大事だと、それもいくつになっても思ったりしています。 このまま、いつまでも諦めない生活を送るのでしょうか。 どこかで諦める日がくるのかな。 そんなことを考えたりする、休日の午後を過ごしています。 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 暖淡堂書房 Amazon dantandho にほんブログ村 ランキング参加中詩 ランキング参加中雑談・日記を書きたい人のグループ
遠い駅 その駅を最後に旅立った子供は 小さな箱を膝の上に抱えたまま 窓の外の景色を眺めていた 古く、少し傾いた、よく震える家の 奥の、薄暗い部屋の、仏壇の前に置き去りにした いくつもの小箱のことを、時々思い出しながら 汽車は風に追い越されるくらいの速度で進んだ その先は、森の、さらに奥 言葉よりも、木々の軋みが多く聞こえる 小さな池のほとりを回り込んだら 不意に谷地坊主が散らばる 冷たい湿地帯の中を走る 時折聞こえる小さな水音は 山椒魚が飛び込む音 古代からの魚たちが、舞い上げる飛沫 霧が、濃い霧が流れ 子供は夢を見る 小さな箱を、抱きしめたまま 夢を見る ***** Google Geminiによる解説 暖淡堂「遠い駅」解説 詩の世界観と解釈 暖淡堂の詩「遠い駅」は、故郷を離れていく少年の心情を、繊細かつ象徴的に描いた作品です。駅を舞台に、少年は過去と未来、現実と幻想の間をさまよい、複雑
鞄 不意に 足が重くなり 乗り込むつもりの 電車に乗り遅れてしまう プラットフォームで 次の電車を待っていると もう電車は来ないとアナウンスがある あきらめて 立ち去ろうとすると 僕の鞄を持った男が 急ぎ足で階段を上っている 声をかけようとしたが なぜか口が開かない その鞄には とても忌まわしいものが 入っているのだ そう教えてあげようとしたが その男には 僕の声はもう届かないだろう ***** 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 暖淡堂書房 Amazon dantandho にほんブログ村 ランキング参加中詩 ランキング参加中雑談・日記を書きたい人のグループ
定点 柔らかな襞状のものに満たされた暗い部屋で 少年は蹲り 昨日見たはずの夢を 思い出そうとしている 夢は 時々現れては また 遠く離れてしまう 昨日見た夢と 同じだ そう少年が思った瞬間に 夢は硬くなり “ここ”が現れてしまう ああ、雪はまだ積もっているか 少年は温かな襞に包まれて 暗い部屋の外を思う その雪が 自らの夢の 現実化であるかのように 少年は 雪を 吹雪を 大量の雪に覆われた 白い大地を 激しく思った そして 雪の冷たい層の中に 滑り落ちることを ふと “ここ”が揺れる その時が 近い そう少年は感じた 再び 温かな襞に包まれ 夢へと滑り込み… ***** Google Geminiによる解説 概要 この詩は、暗い部屋で柔らかい襞状のものに包まれながら、昨日見た夢を思い出そうとする少年の姿を描いたものです。夢は少年の手の届かないところへ逃げ去り、少年は雪に覆われた白い大地を夢
暮らす 家を出るときに 鞄の重たすぎる日がある それでも家を出ると 冷たい雨が降っていることがある 人に会う前に すでに色々と僕を押し戻すものがたくさんある そんな時 少し先にいる僕に引っ張ってもらう それは数年先の自分かもしれない そこにいる僕は いつも軽く笑っている 笑いながら 日々を暮らしている ***** 少し先にいる自分が、笑っているととても安心します。 どんな困難なことも、きっと乗り越えて、その先で笑っているのだと思いたいです。 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 暖淡堂書房 Amazon dantandho にほんブログ村 ランキング参加中詩 ランキング参加中雑談・日記を書きたい人のグループ
坑 道 「私」の部屋の地下を 灰色に膨れ上がった男たちが 掘り続けている 硬い地層には 肉が剥がれ落ち 骨だけになった指を突き立て 柔らかな腐葉土を 歯の抜け落ちた 口いっぱいに詰め込みながら 少しずつ、少しずつ あの北の駅に向かって あの霧に包まれた山で 黄色い蒸気を噴き上げるまで 坑道を延ばし続けている その 不穏な反響 ***** 眠れない夜に聞く、遠ざかる列車の音。 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 暖淡堂書房 Amazon dantandho にほんブログ村 ランキング参加中詩 ランキング参加中雑談・日記を書きたい人のグループ
速度差 〝私〟は 希薄な流体の速度差が生み出す 濃淡の、層状の、互いに混じり合わない 白い空間に置き去りにされる 柔らかな身体と、硬い嘴をもつ 雛の群の中に放り出されたように 〝私〟の身体は 心地よさと痛みとを同時に感じる それは不意に熱く、不意に冷たく 〝私〟を眠らせない ああ、幾本もの白い指よ 〝私〟は〝ここ〟でいい もう行ってくれ… ***** 僕の書棚には、自費出版されたものから古典のものまで、詩集がたくさんあります。 自分で買ったものも多いのですが、自費出版された方から献本していただいたものも結構あります。 「詩と思想研究会」(2003年頃を中心に参加していました)で出会った方々からいただいたものが10冊ほど。 「詩と思想」誌での書評欄の担当をしていた時(2004年頃)に送っていただいたものが20冊ほど。 自分で買った詩集(岩成達也さんや吉増剛造さん、粕谷栄市さんの作品集など)が
それは華だろうか 足元に散り積もった 色とりどりの 僕の傍にいつもある ノスタルジーの塊を チクチクと刺激する 落ち着かなくさせる そしてあの部屋の隅に 引き込んでしまう それは華だろうか 季節の変わり目の 雨を呼ぶだけの 雨を呼ぶだけの… ***** 目の端だけで見ることができるものって、ある気がしています。 けっして真正面からでは見えないもの。 そんな感じで見えている華があるようで。 それは、明るい部屋ではなく、過ぎ去った時間を押し込んでおくところでだけ、見えるもの。 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 暖淡堂書房 Amazon dantandho にほんブログ村 ランキング参加中詩 ランキング参加中雑談・日記を書きたい人のグループ
雨の音 眠りの底に 微かな雨の音を聞いていた それは、故郷の家の トタン屋根を叩く雨の音だった ふと目を覚まし “ここ”に滑り落ちた まだ暗い朝に “ここ”でも雨が降っていた 数十年をはさんで なんという偶然だろう また、僕は… ***** 朝、目が覚めた時に聞く、雨の音が好きです。 その後、雨の中を通勤するのは辛いのですが。 子供の頃は、傘をさして雨の降る中を歩くのが好きでした。 今は、雨を理由に外に出なくなっています。 またいつか、雨の中に、喜んで出ていく日が来るのかな。 その時は、僕は次のモードに移っているのでしょうね。 雨が嫌でなくなったら、さらにその次の準備をしようと思います。 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 暖淡堂書房 Amazon dantandho にほんブログ村 ランキング参加中詩 ランキング参加中雑談・日記
ベンチ 目の前を たくさんの人たちが 通り過ぎていく 僕はベンチに腰をおろしたまま それを ただ見ている 少しだけ 目を閉じてみる 異国の言葉が 周囲を埋めていたことに気づく そして ここが 僕のあの国に つながっていることにも きっと、あの部屋で 僕の家族も 目を閉じて、耳を澄ましている ***** 2001年9月11日の後。 僕は一人でヨーロッパのいくつかの街を移動していた。 ローマ、ラベンナ、バルセロナ、バレンシア、ロンドン。 空港のベンチで、周囲にいる人たちをただ見ている時間が長かった。 家族連れを見ると、僕は自分の家族を思い出した。 そして、遠く離れている家族が過ごしている時間を思った。 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 暖淡堂書房 Amazon dantandho にほんブログ村 ランキング参加中詩 ランキング参加中
たどりつけない 足が、重くなって、もう歩けない 日は傾き、人々は家路を急ぐが 僕は、もうどこへもいけない 北で生まれて、西に帰る僕は その涯に、何かがあるのを確かに知っている だけど、もう歩けないのだ うずくまると 周囲のものがごうごうと音を立てて 僕を置き去りにする 気がつくと、僕は後ろ向きに 速度を上げながらどこかへ向かっているのだが ああ、もうそこには たどりつけない… ***** 北で生まれて、西の土地で暮らしていた頃。 そのさらに西にあるものを、想像したりしていました。 仏教や、その他の宗教について、集中して読んでいたのもこの頃ですね。 この頃、「禅」の書物に出会い、今でも読み続けています。 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 暖淡堂書房 Amazon dantandho にほんブログ村 ランキング参加中詩 ランキング参
晴れ 今朝は晴れ 山にかかる雲の端が 赤く染まっている 雲の切れ間にのぞく空が 青白く光っている 立ち止まれば 妻が背中を支えてくれる 娘が手を握ってくれる 生きていくのに さらに何が必要だというのか 今朝は晴れ もう一度夢を見よう もう一度、夢を見よう… ***** 2008年は、タイとの行き来が増えてきていた頃。 忙しかったのでしょうね。 そして、とても疲れていたようにも思います。 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 暖淡堂書房 Amazon dantandho にほんブログ村 ランキング参加中詩 ランキング参加中雑談・日記を書きたい人のグループ
軽い朝 いつもより眠れた 身体がゆったりと よくのびてい 今日はこのまま 眠っているように 過ごそうか 軽く あそこまで行ける そんな気がする ああ、雪が 降っていたのか それで こんなに 軽いのか ***** 記憶とは、頭のどこかに記録されているものではなく、いつもずっと考え続けているものだと思うことがあります。 考える部分が小さいだけで、いつもそれを考えているので、覚えている。 だから、それを大きくすることで、思い出すことができるということで。 忘れてしまうというのは、いつもずっと考え続けているということをしなくなったこと。 それを、もう考えることをやめてしまったということ。 そうすると、もう思い出すこともできない。 そんなものが、増えている気がしています。 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 暖淡堂書房 Amazon dan
西へ あの街は 雪が降り積もると 冬は暖かかった それがわかったのは 冷たい風だけの 冬を何度も過ごしたから 一人きりでは 耐えられなかったかもしれない 立ち続けることも できなかったかもしれない 僕は家族に 仲間に 支えられながら 自分で立ち歩き続けていける もっと、西へ ***** いつ頃まで、彷徨い続けるのかな、なんて思ったりします。 疲れた、というよりは、そろそろいいかな、みたいな感じですね。 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 暖淡堂書房 Amazon dantandho にほんブログ村 ランキング参加中詩 ランキング参加中雑談・日記を書きたい人のグループ
脆いものの底に 流行するとは やがて廃れるということだ 先頭に立つということは やがて追い抜かれるということだ 目立ってしまうと 皆にいじられ汚れていく 千年、二千年、三千年の時間に洗われ 角が取れ、鈍く光る 触れると冷たいが 次第にさわやかな風を身体の中に送り込むものが それら脆いものの底に 確かに、ある 小魚のように群れ泳ぐ言葉たち 静かに、笑っているような… ***** 時間の底に堆積しているものが、確かにあるように感じています。 変わり続ける一つきりのもの。 変わらない一つのもの。 同じものを、別の面からみているのかもしれませんが。 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 暖淡堂書房 Amazon dantandho にほんブログ村 ランキング参加中詩 ランキング参加中雑談・日記を書きたい人のグループ
また、一歩 僕は、ついさっき考えていたことの上に立っている さっき、していたことの上に立っている さっきまであったものは すべて、僕の足の下にあるのだ そして、僕の前には 真っ暗な、底の見えない闇があるだけ どこに向かって足を進めたらいいのか まるでわからないのだ 不安になって振り返ってみても 今、立っている、この高い柱のようなものの他に ほの明るい空間が見えるだけで 踏みしめていたはずのところはどこにもない 幸い、ここに立ち続けることはできるようだが ここにずっといたならば もう誰にも会えない気がする 家族にさえも ここに立ち尽くすことも 進むことも、すべて僕が決めることだ ここまで進んできたのだ 暗闇に目を凝らし 底の見えない空間に向かって また、一歩… ***** 暮らしていくということは、いつも戸惑い、なんらかの選択をするということの繰り返し。 時間は逆戻りできないので、後悔するこ
追いつく、風 青い空を見上げて ふと子供の頃 同じような青い空を見上げながら 思っていたことが〝ここ〟に追いついた時 背中から 手の先、足の先に向かって 冷たい流れが走り 胸の〝底〟でその源がゆったりと揺れる あの日の僕はここまで来たんだ… そう思うと 青い空から剥がれ落ちた冷たい風が 目の中で渦を巻いた ***** 過去の思いがエコーのように、不意にすぐ近くで響くことがあります。 特に、青い空の下で風に吹かれたような時。 ベルクソンの円錐の図を思い出してしまうのも、そんな瞬間だったりします。 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 暖淡堂書房 Amazon dantandho にほんブログ村 ランキング参加中詩 ランキング参加中雑談・日記を書きたい人のグループ
浸透 振動 窓枠の冷たさ 歪む外の景色 凝る息 声 手摺のざらつき 靴の裏の粘り 逃げる雨 共鳴 不意の強度の増加 と、減衰 位相の逆転 失望 膝の裏の痛み 足首の怠さ 首の痒み 軋み 遠ざかる街 滲む燈 僕の窪み 触れなかった 雨だけの … 浸透 ***** Google Geminiによる解説 暖淡堂の詩「浸透」解説 詩全体の印象とテーマ 「浸透」は、外界との接触、そして内面の変化を、感覚的な言葉で繊細に描き出した詩です。窓枠の冷たさ、手摺のざらつきなど、五感を刺激する具体的な描写が積み重ねられ、読者に鮮やかなイメージを与えます。 この詩の大きなテーマは、外界との関係性の中で変化していく「自分」の姿と言えるでしょう。詩中に登場する「振動」「共鳴」「失望」「軋み」といった言葉は、外界からの刺激が内面に与える影響を象徴的に表しています。 各節の分析 1節:外界との接触 窓枠の冷たさ、歪む景
零下の音 軋む音が 波音に混じり 雪の重たい気配に さらに沈む わずかの物だけを手にした 数人の男たちは 凍り始めた上着の中で 震える身体を跳ね上がらせ 眠れない夜と 雪に覆われた笹藪の中に消えていった その先にあったのは ただ暗いだけの夜と 冷たいだけの 薄い舌がたてる 微かな音 ***** Google Geminiによる解説 暖淡堂の詩「零下の音」の解説 詩全体の印象 「零下の音」は、冬の厳寒と人間の孤独、そして希望の薄れを描いた詩です。雪景色を舞台に、数人の男たちが極限状態の中で生きる様子が、音や感覚を巧みに用いて表現されています。 各部の解説 「軋む音が / 波音に混じり」:冬の静寂を破る軋む音は、厳しい自然環境を象徴しています。それが波音に混じるとは、陸と海の境界が曖昧になり、男たちの状況がますます不安定になっていることを暗示しているのかもしれません。 「雪の重たい気配に /
雨のち晴れ 雨、が降っていた 暖かな朝だった 妻と娘に見送られて 家を出た車から たくさんの水滴が落ちた まだ暗い道を 白いライトで擦りながら走る 濡れた猫の死骸がまだある ライトの破片が散らばっている 打ち合わせを終え 蒸し暑い電車の中で過ごしていると 建設中のやせた骨組みの向こうに 沈む夕日が見えた それは、温かな裏側に逃げ込むような 穏やかな顔だった 電車を降りると 僕だけが冷たい風に包まれた ***** 朝から夜まで、僕たちは歩き続けますね。 同じところを、何度でも。 それが平気になってしまった頃に、突然強い風が吹いて、空を見上げることを思い出させてくれるような気がします。 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 暖淡堂書房 Amazon dantandho にほんブログ村 ランキング参加中詩 ランキング参加中雑談・日記を書き
緩やかにずれる 夏の夜 しつこく続く歯茎の痛みが 「私」の中の何かをざわつかせ それに激しく促されて 不意に 前のめりになりながら 遥かな涯の叫び声を聞きながら 「私」と「身体」が 緩やかにずれる 痛みとともに 置き去りにされたのは 「私」、の方だった ***** いつまでもそこに残っているものは、「思い」だけ。 「感覚」だけ。 乗り物と思いがちな「身体」は、気がつくと先に進んでいる。 そして、けっして振り返らない。 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 暖淡堂書房 Amazon dantandho にほんブログ村 ランキング参加中詩 ランキング参加中雑談・日記を書きたい人のグループ
ともだち 今日 娘のともだちが 引っ越していく 娘は いつものように 一緒に遊んでいる そして、そのまま別れるようだ この日が、胸の中の 冷たいしずくになっていることに 気がつくのは いつのことだろうか その日も 空が晴れていてくれたらいい ***** 娘がまだ幼稚園に通っていた頃のことですね。 引っ越していく友達と、最後に遊んでいます。 遊び終わると、そのままお別れ。 それでも、なんのわだかまりもなく、普段通りに遊んでいました。 ふと、自分の最後の日も、そんな感じで過ごせたらいいなと思ってしまいました。 飛躍しすぎですね。 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 暖淡堂書房 Amazon dantandho にほんブログ村 ランキング参加中詩 ランキング参加中雑談・日記を書きたい人のグループ
午後、駅で 駅のプラットフォームの 古い木製のベンチに おばあさんが座っていた 僕の乗る電車が プラットフォームを離れるとき おばあさんはのんびりと おにぎりを食べていた 電車の窓を 早春の陽射しが 暖めていた ***** さだまさしさんの作品に「空蝉」という曲があります。 老人が駅で、帰ってくるはずの息子を待っている情景が歌われています。 その歌を思い出すたびに、帰らなければ、という思いと、もう間に合わない、という後悔が、心のなかでせめぎ合います。 戻らない時間。 駅には、そんな時間がいくつも、層状になって流れている気がします。 www.youtube.com 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 暖淡堂書房 Amazon dantandho にほんブログ村 ランキング参加中詩 ランキング参加中雑談・日記を書きたい人のグループ
地下茎 ここ、に この地下に溜まる 巨大な爆縮が持ち去った 触手の時代の空洞 あるいははじめからなかったもの 後退する凍土が置き去りにした湿地 涯からの響きに応えるのはこの地下に並ぶ灰色に膨れ上がる腹を抱えた箱舟の群暗い窓に浮かぶ口不ぞろいな歯に肺が潰れもう息を吸い込むことの出来ないがための窒息する叫び 北の、西の、南の、東の 炭鉱を、灰色の男達が、女達が取り囲み 赤い提灯を掲げて、回り始める とろけるようにゆがむ遠い涯に陽が落ち 水から上がったばかりの月が光を滴らせると 男達が提灯の火を互いの背に押し付け 腐臭を漏らす 女達が下腹に零れ落ちる塊を 乳飲み子のようにあやす その時、不意に燃え上がる駅舎 響き渡る呱々の声 北の地の、いくつもの坑道口から噴出す炎 そのなかでのたうつ 地下茎 絡まりあう紐帯 激しい風が呼び込まれ 影が、赤い光の中に消える、と (…忍び込む、涯… 「私」は地下の腐
砂の砦 甲冑をまとったまま 浅い眠りから覚めた男は 目の前に広がる砂漠の その涯に舞い上がる砂嵐を見た それは数万の軍勢が 怒りの声を上げながら迫る標 男がたった一人で防がなくてはいけない 狂乱の奔騰 狂気の激流 味方はただ眼球の溶け落ちた 暗い眼窩を兜の庇に隠した男たちだけ やがて男は砦の前に立ち 錆びた剣を振り上げる この砦を守るために あの青い月の夜 たった一度交わした 言葉のために ***** Google Geminiによる解説 暖淡堂の詩「砂の砦」解説 詩の全体像 「砂の砦」は、壮大な自然と人間の孤独、そして使命感を描いた詩です。砂漠という過酷な環境の中で、男はたった一人で、数万の軍勢が迫る砂嵐という絶望的な状況に立ち向かいます。この詩は、男の内面の葛藤と決意、そして過去の出来事が現在の行動に深く結びついていることを暗示しています。 詩の各節の解説 1節・2節: 甲冑を身につけ
港と駅のある街で 三 不意に音が止む と 空間を埋める雪に遮られていた 街燈の光が浸潤するように 雪片と雪片との間の空隙に広がる そして 全空間が乳白色に輝き始めたとき (…微かな羽音… 赤信号が一斉に明滅を開始する と また雪が 音が そして息苦しい空間の重さが また、微小な物体の運動の稠密さが 時を刻み始める 灰色の男たちは 肺を絞り 絶望の声を上げるのだ ***** 雪の降り頻る夜の、街灯の光が切り取る円錐状の舞台で。 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 暖淡堂書房 Amazon dantandho にほんブログ村 ランキング参加中詩 ランキング参加中雑談・日記を書きたい人のグループ
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