土曜「聞く・語る」【北の歴史 動いた瞬間 合田一道】 開拓判官・岩村通俊の「御用火事」 開拓使開墾掛の「細大日記」。「小屋不残焼払」の文字が見える(北海道立文書館所蔵) 御用火事を指揮する岩村判官を描いた絵=「北海道における日米の歩み」より ■資金貸しても家建たず…火つけ 開拓判官、岩村通俊の「御用火事」をご存じだろうか。岩村自ら馬に乗り、札幌の草小屋を次々に焼き払ったというのだ。河野常吉編『さっぽろの昔話 明治編』(1978年刊)に複数の古老の話としてある。要約すると―― 1871(明治4)年ごろの札幌中心部は人家といっても草屋ばかり。開拓使は移住者に家の建設資金百円を貸し与えたが、新しい家はいっこうに建たない。怒った岩村判官は72年春、作業員を指導して片っ端から火をつけた。突然の放火に家財道具も運べず逃げまどう人々で大騒ぎだった。 『札幌区史』(1911年)には、岩村が8尺の白木綿に「