(光文社・2750円) 暴走する資本主義につける薬を探す旅 ≪社会の「底」が抜けてしまっ≫た! 危機感がひしひしと迫ってくる。なぜ日本経済がダメか。なぜ人びとは生きづらいのか。本書を読めば一目瞭然だ。凡百のビジネス書を読む暇に、本書を百回読みなさい。 宮台氏は社会システム論の達人。野田氏はMBAの凄腕(すごうで)トレーナー。最強タッグの二人が足かけ20年、練り上げた講義を活字に再現した。ハーバーマスやルーマンやギデンスや、社会科学の一流どころを使い倒した時代診断は、文句なしに世界最高水準。その一端を紹介しよう。 第1章は≪構造的問題≫。のどかな南の島がコーヒー豆をつくり始めた。便利な日用品を買うためだ。でもコーヒー豆はすぐに値崩れ、島は貧困に苦しむ。なぜこれが「構造」的問題なのか。悪者がいなくてもシステム(市場)に巻き込まれるなら、逃れられない宿命だからだ。