NHK大河ドラマ『光る君へ』や、映画『陰陽師0』のヒットで、陰陽師・安倍晴明に再び注目が集まっている。こうしたエンターテインメント作品に登場する晴明の姿は脚色されており、実像が広く伝わっているとは言い難い。晴明とはどういった人物で、いかにして伝説化していったかを追ってみた。 陰陽寮所属の役人・天文博士 安倍晴明は平安時代に実在した人物で、『続群書類従』の安倍氏系図は1005(寛弘2)年に85歳で没したとある。そこから逆算すると、生誕は921(延喜21)年になろう。 伝説上の晴明は、式神(しきがみ)といわれる鬼神を操り、物の怪を祓(はら)う超人・異能力者として知られるが、史実上は陰陽寮(おんみょうりょう)に属した官人、つまり役人だった。 『前賢故実』の安倍晴明。手前に控えるのが、晴明が操る式神。(国立国会図書所蔵) 陰陽寮とは、7〜10世紀の律令制(法体系や制度に基づいて国を運営する制度)の