【連載】松本俊彦「身近な薬物のはなし」(7) はじめに――市販薬乱用・依存の現状 本連載ではここまで、身近な薬物としてビッグスリーのうちの2つ――アルコールとカフェイン――をとりあげてきました。ここでいったんビッグスリーから離れて、別の意味での身近な薬物といえる処方薬や市販薬といった医薬品に寄り道してみます。 今回はまず市販薬です。 第1回で述べたように、今日、精神科医療現場で年々深刻さを増している薬物は、医薬品です。そのなかでも、10代、20代といった若年層で特に問題となっているのが市販薬なのです。 いまから10年あまり前、「脱法ハーブ」などの危険ドラッグ乱用禍が社会を席巻しました。規制強化と新たな脱法的薬物の登場というイタチごっこをくりかえしながら、薬物による健康被害や、薬物使用下での自動車運転による交通事故などの弊害がますます深刻化していく、あの悪夢のような一時期を、私はいまでも鮮明