「きっと、みんな『自分はがんになんてならない』って思っているでしょう。俺もそう信じ込んでいました。ずっと健康そのもので、自分は病気なんて無縁だと思ってきたんです。だから、いざ病が降りかかってきた時に次から次へとこんなにも苦しいことが起きるなんて、想像したことすらなかった」 そう話すのは、芥川賞作家の花村萬月さん。4年前、血液のガンである「骨髄異形成症候群」と診断され、闘病を続けてきた。今春上梓した新刊『ハイドロサルファイト・コンク』(集英社)は、その壮絶な体験を基にした私小説。ストーリーは、花村さんの本名である吉川一郎の一人称で展開される。ラストの一部分を除き、すべてが実体験に基づく描写だ。