2024年8月30日に公開された山田尚子監督の最新作『きみの色』について、当サイト管理人が舞台となった長崎の歴史を踏まえ、変えられない出来事の意味を書き換える「パラフレーズ」という観点から論じる。なお、本記事には『きみの色』の結末に関する記述が含まれる。 The Paraphrasology of “Salut”: Nagasaki, Kyoto Animation, and Kimi no Iro|teramat 文:てらまっと 坂の上にある虹光女子高等学校の聖堂に朝陽が射しこんでいた。1 一瞬、あたり一面が強烈に明るく淡いピンク色の光に包まれた。まるで虹が落ちてきたような、美しいと言っていい情景だった。2 かれこれ10年ほど前、原爆に関するフィールドワークの手伝いのために何度か長崎を訪れたことがある。平和公園や爆心地公園、長崎原爆資料館、国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館といった公式の関