性教育を問う(5) 性教育が広く社会の関心を集めた出来事がある。2003年7月の「東京都立七生養護学校事件」。同校の性教育を問題視した都議らが学校を視察し、教員の大量処分につながった。性教育批判が国レベルに拡大していくきっかけの一つにもなった。その時、何があったのか――。当時の関係者への取材と裁判資料をもとにたどった。 当時、東京都議らに対応した養護教諭の女性(60)は、その時の「威圧的な空気」を今もはっきり覚えていた。 03年7月4日午後3時すぎ。10人以上のスーツ姿の人たちが、ぞろぞろと保健室に入ってきた。 「大きい人形がないなあ」と、都議の1人が言った。都議が性教育の絵本や教材の名前を挙げ、都教育委員会の職員に持ち出しを求めた。 人形は服を脱がされ、性器の部分をあらわにされて床に並べられた。都議や、同行していた産経新聞社の記者らが何枚も写真を撮影した。「普段は、下半身だけ強調するよう