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「無断と土」(以下、「本作」)の構成を示す。まず、「A」「B」という見出しとともに、2つの詩が提示される。その後、「0」(便宜上「第0部」と呼ぶ)から第4部までシンポジウムの口頭発表原稿、ないしレジュメという体裁の文章が続く。そのなかで、冒頭の「A」「B」は口頭発表の付帯資料だったことがわかる。第4部が終わると「質疑応答」に移り、質問者1~質問者4と発表者のやりとりが記述される。最後に作者からのメッセージと取れる、しかしそれだけでもない「ト書き」が置かれる。 口頭発表では、架空の詩人や架空のVRゲームをめぐる事実について記述されると同時に、天皇制、ホラー(恐怖)、そして「〈喩 figure〉」(102上/571/231)といった事柄について論じられもするから、読者はそれらが絡まり合った記述を整理しながら読まなければならない。このことが本作の難解さを生んでいる。したがって本記事では読者の助け
新型コロナウイルスが感染を拡大している情勢を鑑み、史上初めて、刊行を延期したSFマガジン6月号。同号に掲載予定だった、SF作家によるエッセイ特集「コロナ禍のいま」をnoteにて先行公開いたします。本日は上田早夕里さん、小川一水さんのエッセイを公開。以降2名ずつ、毎日更新です。 ――――――― パンデミックを題材にしたフィクションは、国内海外を問わず数多く存在するが、今日はその中から、科学ジャーナリストであり作家でもある川端裕人による『エピデミック』(【初出】二〇〇七年・角川書店/電子版あり)を取り上げて、話を進めたい。 エピデミックとは、一地方における予測不可能な感染症の増大を指す言葉である。それが世界規模まで広がるとパンデミックとなる。本作では、インフルエンザと誤認された新型ウイルス性肺炎(重症化すると人工呼吸器が必要になる)が日本の一地方で発生し、急速に地域社会を蝕んでいく過程が描かれ
新型コロナウイルスが感染を拡大している情勢を鑑み、史上初めて、刊行を延期したSFマガジン6月号。同号に掲載予定だった、SF作家によるエッセイ特集「コロナ禍のいま」をnoteにて先行公開いたします。本日は長谷敏司さん、林譲治さんのエッセイを公開します。 ――――――― 今年の桜は、意外なほど長く花を留めました。春らしく芽吹く緑も、昨年と変わりはありません。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、現生人類に大きな被害をもたらすウイルス(SARS-CoV-2)による感染症であり、パンデミックは現生人類を除いた自然には顕著な影響を及ぼしていません。このまま人類が絶滅したら、現在提案されているところの人新世(アントロポセン)、人類というひとつの種によって支配された特殊な地質年代がその衰退によって終わったという、地球の大絶滅の歴史に一ページを加えるものになるでしょう。現時点では、まだウイルス
対象物体の表面形状を3Dデータ化することを目的として、以下の条件を満たした上で実現可能な技術を調査し、3D計測技術の中からSfM/MVS技術を採用しました。 複数枚の写真に写る対象物体がSfM/MVS技術を使って3Dデータ化されるプロセスを、実例と合わせてご紹介します。 はじめに 対象物体の表面形状を3Dデータ化することを目的として、以下の条件を満たした上で実現可能な技術を調査し、3D計測技術の中からSfM/MVS技術を採用しました。 3Dデータ化したい対象物体を、市販のカメラで複数枚撮影するだけで3Dデータを作成できるのがSfM/MVS技術です。「SfM(Structure From Motion)多視点画像からの3D形状復元」で生成されるのは、低密度な点で構成された3Dデータです。高密度な点群データを生成するために「MVS(Multi-View Stereo)多眼ステレオ」を使います。
新型コロナウイルスが感染を拡大している情勢を鑑み、史上初めて、刊行を延期したSFマガジン6月号。同号に掲載予定だった、SF作家によるエッセイ特集「コロナ禍のいま」をnoteにて先行公開いたします。本日は上田早夕里さん、小川一水さんのエッセイを公開。以降2名ずつ、毎日更新です。 ――――――― 五月の晴れた日に強力な感染症が人類を滅ぼしていくSF小説「復活の日」で、故・小松左京は、滅亡に瀕した知識人の認識というものを、フィンランドの大学教授によるラジオ講座という形で語らせた。このスミルノフ教授という人は自身も感染して高熱が出ている状態で、学者としての義務を果たすために放送局に入り、凶暴な疫病という真の脅威に出会うまで、ついに人類が団結しなかったこと、学者がそれを真摯に促さなかったことに批判と自省の言を述べた。 復活の日は一九六四年の作品だが、然して現在二〇二〇年、この稿と同時に掲載されるであ
新型コロナウイルスが感染を拡大している情勢を鑑み、史上初めて、刊行を延期したSFマガジン6月号。同号に掲載予定だった、SF作家によるエッセイ特集「コロナ禍のいま」をnoteにて先行公開いたします。本日は飛浩隆さん、野尻抱介さんのエッセイを公開。2名ずつ、毎日更新です。 ――――――― ご無沙汰しています。最後にお会いしたのは昨年の晩秋でしたか。実はSFマガジンからエッセイの依頼を受け、書きあぐね、その挙げ句にあなたへの手紙を書いています。とんだとばっちりですがお付き合いください。 あの日はご自宅に招いていただき、ご家族とともに台所に立ち昼食を作ったのでした。棚の調味料や食材に自然光が差していました。ヒマラヤのピンクの塩、シシリアの白の塩。緑、赤、白の粒胡椒。ベルガモットのマーマレードなんて初めて見ました。「へー」と感心している私をあなたは可笑しそうに頬杖をついて眺めていた。中東に留学された
新型コロナウイルスが感染を拡大している情勢を鑑み、史上初めて、刊行を延期したSFマガジン6月号。同号に掲載予定だった、SF作家によるエッセイ特集「コロナ禍のいま」をnoteにて先行公開いたします。最終日の本日は、藤井太洋さん、津原泰水さんのエッセイを公開します。 ――――――― 菊頭蝙蝠(キクガシラコウモリ)の細胞を住処にしていた或る構造体が人体という新天地を見出した、というのが僕が数週間に亘って信じていた新型コロナウイルスことSARS-CoV-2物語の序章だが、情報検索のキイワードをすこし変えてみると重要な役柄に穿山甲(センザンコウ)がキャスティングされる。全身鱗の鎧に被われた、細長い顔が愛らしい、よく犰狳(アルマジロ)と間違えられるあれだ。そのコロナウイルス群の宿しやすさは研究者には周知だったという。鱗は薬として『本草綱目』に記され、肉を好んで食す人々もある。 自ら移動する手段を持たな
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