今回は、第48回新潮新人賞を受賞してデビューした古川真人の新人賞受賞第一作「四時過ぎの船」について書いていきたいと思う。 デビュー作である『縫わんばならん』は芥川賞候補になり、単行本も出版されている。『縫わんばならん』について、小説家の小山田浩子は「記憶し語りあい分かちあう営みが布地を複雑に織り上げ、自分と繋がる大きな流れを実感させる。そのことが人の心を暖める。力づける。」(「新潮」2017年3月号掲載、小山田浩子「記憶の布地」より引用)と書いた。先祖から子孫へ代々受け継がなければならないという命のバトンという言い回しを引き合いに出しながら、小山田浩子はそれとは違う人と人とのつながりにあたたかさを見出していたように思う。「親やきょうだいや義理の何やかにや、友達、知りあい、複雑に延びた糸が重なりあい織り上げられつつある布のごく一部、先端などなく、前にも後ろにも横にも斜めにも連綿と繋がっている