作家・片岡義男と江國香織ーー長きにわたり第一線で創作を続けているお二人は、どんなふうに小説を書いているのだろう? 批評家・佐々木敦氏を聞き手に、小道具の選び方から時間の流し方まで「創作のヒミツ」を縦横に語ってもらった。小説の読み方が変わります! 小説をどこから始めるか 佐々木:片岡さんと江國さんは、今日が初対面ということですね。まず、片岡さんの新しい短編集『と、彼女は言った』のことからお話に入って行きたいと思います。江國さんは本書を読んで、どんなことを感じられましたか。 江國:この本に限らず、片岡さんの小説ではいつも、ひとつずつの言葉の際立ち方に驚きます。特にここ最近の短編集は1編ずつが短いですね。ストーリーも極めてシンプルだし、費やしている言葉の数がとても切り詰められていて、でもこれ以外にありえないという、言葉ひとつひとつの扱いの、清潔な手際にびっくりしながら読みました。 片岡: まず書