「マリグランデの街が陥落したらしい」 その凶報に間抜けな顔で口を半開きにして応じたのはヴェルストリエ王国近衛騎士団筆頭騎士、銀閃のノクタールだ。 王国で随一と謳われた男が普段の冷静な表情を崩し、かつて王国を襲ったドラゴンの襲撃にすら見せることのなかった動揺を露わにしている。 それがどのような意味を持つのか、ノクタールに凶報を告げた同僚の騎士とて理解していた。 張り詰めた空気が二人の間に流れるなか、ノクタールは感情を押し殺すように静かに問うた。 「マリグランデの街は我が国において最も堅牢な街。どこがあの街を落とした? クリスタルドーン教国か? グル=グ=グ異人共同体か? もしやエレナ帝国ではないだろうな?」 「違うんだ、……シャワーが出た」 瞳を閉じて、静かに、そして深く呼吸を行う。 それだけで、ノクタールはマリグランデの街に起った出来事の全てを悟った。 シャワーは嵐や地震と並び災害に認定さ