ユダの福音書(参照)が話題になっているが、ナグ・ハマディ文書ほどの大ニュースではないかな。どちらかといえば「文学的」な事件だろう。エイレナイオスの『異端反駁』によると、グノーシス主義のカイン派の文書らしい。ダウンロードしてパラパラ読んでみると、たしかにグノーシス主義的表象と用語が用いられている。 グノーシス主義については分派が多いので解説が難しいが、『ナグ・ハマディ文書I 救済神話』の「グノーシス主義救済神話の類型区分」で、大貫隆はグノーシス主義各分派に共通する要素を5つあげている。 人間の知力をもってしては把握できない至高神と現実の可視的・物質的世界とのあいだには越え難い断絶が生じている。 人間の「霊」あるいは「魂」、すなわち「本来的自己」は元来その至高神と同質である。 しかし、その「本来的自己」はこの可視的・物質的世界の中に「落下」し、そこに捕縛されて、本来の在り処を忘却してしまってい