日本政府がICRPの安全基準を採用するというのは、国としての責任を果たすという点においてやむを得ないことかも知れない。しかしながら、ICRPの今の安全基準は間違っている。なぜならこれは、前世紀の人々の放射線観を基に設定した基準だからだ。つまり、1950年代から1970年代にかけて世界中に広がった核の脅威に対し、人々の恐怖心をなだめることの主たる目的に設定された値なのだ。 ICRPの安全基準は見直す必要がある ICRPの安全基準の数字と本来あるべき数字との間に大きな隔たりが生まれてしまった理由をまとめると、次の3つになる。 第1に、一般大衆の心の中で、核兵器の危険性と放射線が結びついていること。第2に、人々の被曝線量を最小限に抑えるため、もしくは、安全と安心を求める人々の願望を満足させるために設立されたICRPなどの諸機関が、与えられた狭い責任の中で、設立目的通りの活動を行っていること。第3