私は十年以上も前に「NHKにようこそ!」という小説を書いた。これは作者である私にとって呪いの小説のようなものであり、私は最近までこの呪縛に苦しめられていた。 あれを書いて以後ずっと、私は挫折感に苦しめられてきた。 なんでまた、頑張ってせっかく書いた小説に苦しめられるなんてことになるのかと言えば、理由はいろいろある。 一つ大きな原因として、作者の私が、思いっきり、ストーリーを途中でごまかしてしまった、そのため書きたかったことを書けなかったということがあげられる。 その失敗感、挫折感から、私は長年抜け出せずにいた。 NHK9章で主人公は、自分が寂しさを感じて苦しんでいるということを自覚する。これはとても貴重な自覚である。主人公はこれまでずっと、自分のそのような繊細さを見るまいと頑張ってきた。しかしその心の壁が一瞬外れたとき、彼はついに寂しさを自覚する。 なのに次の章では、その寂しさの件が完全に