僕がまだ小学生だった頃。 父と母は毎日の様に喧嘩をしていた。 母は父の稼ぎの少なさを貶し。 父は病弱で働きに出れない母の不甲斐なさを責めた。 『お父さんとお母さん離婚するかも知れない。』 『お前はどっちに来たい?』 こんなにも恐ろしい質問を 浴びせられる事も日常だった。 僕は唯一大人に対抗出来うる手段。 涙をもってして 二人の離婚を阻止しようと試みる毎日だった。 小学生の僕は毎晩寝る前に祈った。 お父さんとお母さんが喧嘩しませんように。 お父さんとお母さんが離婚しませんように。 お父さんとお母さんが仲良くなりますように。 みんなが幸せになれますように。 毎晩布団の中で百回祈った。 百回祈れば明日の朝には みんな仲良くなれることを信じて。 それでも土曜の夜には また当たり前の様に喧嘩が始まった。 きっかけはきっと些細な内容だったのだと思うが。 父が怒り母に投げ付けたニンジンが。 押入れの襖に