経営者の物語を書きたいと思った。 「取材」をしようと思い、経営者の書いた本と、経営者を主人公にした小説を幾つか図書館で借りてきて読んだ。 私はそこに孤独が書かれていると思っていた。 出資を受け、または個人保証で金を借りてハイリスクな勝負を挑む、冷徹な勝負師の過信と不安のせめぎあいの末の苦悩があると思っていた。 だが、どこにもそんなものはなかった。 書いてあったのは、単に運の良いバカの物語だった。 あるいは、イベサーの主催者だった学生時代のノリで、何の根拠もなく金を借りまくって、前を見ないで疾走する犬が木にぶつかって転倒するぐらい自然に事業に失敗する物語だった。 元銀行員が書いたという触れ込みの小説に至っては、主人公を経営者にしただけの安っぽい時代劇だった。 なぜ「孤独」や「勝負」が書かれていないのだろうか、何らかの事情で書いてはいけない事になっているのかもしれない。あるいは借りてきた本が悪