昨年に引き続き、NHK特集の『無縁社会』が話題となっている。 “無縁”の先にあるものが何なのか知っておくべきだと思うので、個人的には見て おいて損は無い番組だと思うのだが、メディアの一部に「皆で有縁を取り戻そう」 的な回帰色が出ているのが気になる。 基本的に無縁とは我々が選んだものであり、時計の針を戻すことは不可能だ。 それを再認識させてくれたのが本書である。 中国地方の山間部の閉鎖的な村落で、つい近年まで(短時間での)殺人被害者数の 世界記録となっていた事件は起きた。事件のことは知らなくても、八つ墓村で電灯 を頭に巻いて猟銃と日本刀振り回すおじさんを覚えている人は多いはず。 あれのモデルとなったのが本件だ。 本書が優れているのは、従来の被害者側からの視点にくわえ、家族内の緊張関係や ムラ社会との軋轢にも踏み込んでいる点だろう。 それにより、昔からある「本人異常説」や「痴情のもつれ説」とい