(2009年5月/渋谷区某所にて) リリー・フランキーは、胸に「LOOSER」と刻まれたTシャツを着て、ほうじ茶を啜っていた。220万部を越すベストセラー小説の著者であり、また最多時で月に四十誌以上の連載を抱えていた売れっ子コラムニスト。傍から見れば、紛れもなく成功者であり、勝者である。だが、飽くまでも気分は「LOOSER」。福岡の炭坑町に生まれ、それこそ「差別している人もされている人も目の当たりにして育った」という生粋の九州男児は、今でも「感覚的には差別されている側の世界にいる」と語る。上手く言えないのだけれど、要するに、リリー・フランキーは〝こっち側〟の人間なのだ。 「これで食っていこうとかじゃなく、ああこれで三千円もらえるんだって感じ」 マスメディアの世界に足を踏み入れたのは十九歳の頃。とある雑誌に描いたイラストが、三千円の報酬になって手元に返ってきた。とはいえ、そこにプロのイラスト