ブルーノ・タウトは、戦前日本にやってきたドイツの建築家で、桂離宮を褒め称え、日本人の自尊心をくすぐった人物として記憶されている。ところが、この人の建築作品を知っている人は建築の専門家を除くとわずかだろう。私も知らなかった。そして、驚いた。とりわけ「アルプス建築」の尋常ではないところに。 「アルプス建築」(Alpine Architektur)はタウトが1919年に発表した壮大な建築プラン。アルプスの山頂、谷間にクリスタルの大伽藍を建設しようという大きな夢の塊で、表現主義の建築家としての彼の真骨頂を示したヴィジョンだ。もちろん、規模の点でも実利のなさという面でも実現は不可能であることを作った本人がよく分かりながら書いた夢の建築。タウトは若い頃、絵の道に進むか、それとも建築家になるかでかなり迷ったという。その彼が画才を発揮した作品でもある。 この「アルプス建築」の画像をWeb上で見ることができ