アメリカの片田舎を絵に描いた。絵の中に私はいた。そんな気になった。その小さな町のはずれに、やはり小さな工場はあった。「ハイ・オン・ディーゼル&ガソリン・モーターズ」と看板にあった。工員が古いビュイックの下に潜り込んでなにか作業をしている。 「こんにちは。お仕事中すみません、"魂の駆動体"についてお話を伺いたいのですが」と言う。 老人がビュイックの下から台車を滑らして出てきた。頑固そうな白人の老人だった。 「ちょうど休憩にしようとしたところだ。奥の事務所へ行こう」 そして、私ははるばる太平洋をわたり、カーの話、猥褻カーの話を聞くことができたのだった……。 「あれは……デトロイトの連中がおたくの国のカーをハンマーで叩き壊しているころだったか。あんた、どんなに怒っていても、カーに関わる人間が、カーにあんなことしちゃあいけねえよ。ま、そんなときにおれは思ったんだ。この国の人間が日本のカーを選ぶんだ