背景や人物が、実際に存在しているかのような映像表現を目指してきた京都アニメーション。このような緻密で劇的な作品を世に送り続けることがなぜ可能だったのか。アニメ評論の第一人者、藤津亮太氏がその秘密に迫る。 ◆◆◆ 日本を代表するアニメーション制作スタジオのひとつ、京都アニメーション。同社の作品は、美しく緻密な映像と劇的な物語で知られ、国内だけでなく国外にも多数のファンがいる。ここでは京都アニメーションの歩みをたどりながら、その作品の魅力の秘密を探っていこう。 同社は1981年に創業し、1985年に法人化を果たした。もともとは仕上(セル画に色を塗る工程)を専門とする会社だったが、やがて作画部門を設け、1990年代半ばから「グロス請け」を手掛けるようになる。「グロス請け」とは、TVアニメの1話分の制作をまるごと引き受けるというアニメ業界の下請けの形態のひとつだ。90年代の京都アニメーションは、丁