標識はいらない アリゾナ州フェニックスで出会ったタイラー・ウォールズは、「ナバホ・ネイションに行くんですか? 迷子になりますよ」とわれわれに忠告した。彼は新たな地図の作成事業に携わっているという。 タイラーの忠告は正しかった。保留地は広大で、アイルランドほどの大きさだった。道路の4分の3が未舗装で、道路標識も信用してはいけない。実際、ナバホの人々は住所や標識などを当てにしておらず、GPSには出てこない地名で現在地を把握している。 「86号を右折して、分かれ道を北に。すると2階建ての家がぽつんとあって、そのあとすぐに『カルバート』があります」 辞書によると「カルバート」は、暗渠(あんきょ)のことだ。もう少し調べてみる必要がありそうだ……。 5年ほど前から、「ナバホの地図をつくる」という巨大な計画が始まった。名前のないまま、あちこちに散らばった5万ほどの建築物に住所を割り当てるのだ。 この計画