ステントグラフトの手術をはじめ、血管病のスペシャリストとして知られる大木のもとには全国各地から患者が訪れる。なかにはほかの病院で「手術不能」とされ、大木に最後の希望を託そうとやってくる患者も少なくない。 大木は手術がどんなに難しかろうと、可能な限り引き受ける。そしてリスクを伝えた上で「まかせてください」と伝える。医師にとっては勇気のいる言葉だが、医師としての覚悟を示すことが、患者との信頼関係を醸成する第一歩と考えるからだ。 預かった命を1日でも早く助け出すために、大木は週4日、手術室に立ち、年間およそ800件の手術を行う。大動脈瘤(りゅう)・頸動脈狭窄(けいどうみゃくきょうさく)症・閉塞性動脈硬化症など、脳と心臓を除く全身の血管が対象だ。 朝から晩まで手術台に向かい続ける日常を支えるのは「ただ、人に喜ばれたい」という想いだ。劣等感を抱いて育った幼少期、人から感謝されることの喜びを痛感し、