● もう一つの古事記の説話 ● 昔、勢夜陀多良比売(せやだたらひめ)という美女がいた。 「そんなに美人なのか」 うわさを聞きつけた大物主神が見にいってみると、うわさ以上であった。 「おお、すごすぎる!」 大物主神は勢夜陀多良比売に一目ぼれした。夢中になった。なんとか彼女が外へ出たときを見計らって声をかけようと試みた。 でも彼女、かなりの出不精のようで、トイレのときしか外出しなかった。しかも用がすめば、すぐに家の中に引っ込んでしまうのである。 これでは声をかけるチャンスがない。用を足している最中しか、チャンスがない。 「まさか最中に声をかけるわけには……」 はじめはそう思ったであろうが、ほかに機会がないので、強硬手段に出るしかなかった。 「それにしても、どうやって声をかけようか」 大物主神は考えた。いいことを思いついた。 赤い矢に化けると、勢夜陀多良比売が用を足しに来る頃を見計らって川の上流
● 日本書紀の説話 ● 昔、倭迹迹日百襲姫命(やまとととひももそひめのみこと)という令嬢があり、彼女のもとに通ってくる男があった。 例の大物主神である。 大物主神は暗くならないと現れず、夜明け前にどこへともなく去っていった。 そのため、倭迹迹日百襲姫命は夫の顔を見ることもできず、不満だった。 あるとき、倭迹迹日百襲姫命はたまりかねて大物主神に言った。 「たまにはもう少し遅くまでとどまっていてください。そうすれば私は、あなたのうるわしいお姿を見ることができます」 大物主神ももっともなことだと思った。 「では明日の朝、私はあなたの櫛(くし)箱の中に入っていよう」 「櫛箱の中?」 そんな小さい箱の中に、どうやって人が入るのであろうか? 大物主神が笑って言った。 「そうだ。ただし、真の私の姿を見ても、決して驚かないように」 倭迹迹日百襲姫命は変に思ったものの、翌朝、まさかと思って櫛箱を開いてみた。
神社は不思議なところである。 朝も昼も晩も、いつも開いている。年中無休である。全国チェーンである。 都会の真ん中にあるかと思えば、コンビニもないような辺境の地にもある。 なかなか人の登ることができない山のてっぺんにあるかと思えば、どうやってたどりつけばいいのか、湖や海の中にまである。 神社に祭られている神のバリエーションも豊富である。 アニメ映画「千と千尋の神隠し(宮崎駿監督)」ではないが、日本には八百万(やおよろず)の神々がいるといわれている。 天照大神(「倭国味」等参照)のような「太陽神」もあれば、埴山媛神(はにやまひめのかみ)のような「大便神」もある(「神々系図」参照)。 天満宮(てんまんぐう。祭神菅原道真。太宰府天満宮・北野天満宮等)や東照宮(とうしょうぐう。祭神徳川家康日光東照宮・久能山東照宮等)などなど、生前は人間だった神を祭る神社もあれば、靖国神社(やすくにじんじゃ。東京都千
安康天皇横死を知って、大泊瀬皇子は即座に動いた。 まず、兄の八釣白彦皇子(やつりしろひこおうじ)を責め、問い詰めた。 「眉輪王が大王を殺した。ヤツをそそのかして殺させたのは、お前だな?」 八釣白彦皇子はびっくりした。そんな知らせはまだ聞いてもいなかったであろう。逆に弟を疑って聞き返したかもしれない。 「どうして私が知らないことを、すでにお前が知っているんだ?」 大泊瀬皇子は怒った。 「そうやってしらばくれているところを見ると怪しい。怪しすぎるっ」 そう言って殺してしまった。 続いてもう一人の兄、坂合黒彦皇子(さかいのくろひこおうじ)を責めた。 「眉輪王が大王を殺した。ヤツをそそのかして殺させたのは、お前だな?」 坂合黒彦皇子はびっくりした。声も出ずにいると、大泊瀬皇子はますます怒り出した。 (このままでは殺される!) そう思った坂合黒彦皇子は、スキを見て逃げ出した。眉輪王も共に逃げ、葛城氏
翌安康天皇二年(455)正月、中蒂姫皇女は大后(皇后)に立てられた。 安康天皇には皇子女はいなかった。 つまり、継子ではあるが、眉輪王にも皇位の可能性が見えてきたのである。 安康天皇は中蒂姫皇女を寵愛(ちょうあい)していた。 実子のない安康天皇にとって、愛する女の息子は、真の我が子同然であった。 また、安康天皇は、妻の兄・市辺押磐皇子(いちのべのおしはのおうじ)とも懇意にしていた。 いずれは彼に皇位をとも考えていたようである。 「後継者はオレではないのか」 大泊瀬皇子は危機を感じたであろう。 「ここままではまずい」 そして、よからぬことを考えたかもしれない。 安康天皇三年(456)八月、安康天皇は神を祭った後、楼閣に上り、酒を飲み、中蒂姫皇女のひざ枕で横になった。 「朕(ちん)は幸せだ」 安康天皇はネコのようにほおをすり寄せて丸くなった。 何も言わない妻の顔を見上げて問うた。 「なんじは幸
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く