山幸彦は目を覚ましました。 「あれ?僕は海に落とされたんじゃあ?」 起き上がると、立派な御殿が建っていました。 「ここはどこだ?」 表札には「海神・豊玉彦(とよたまひこ)のおうち」と書いてあります。 「ああ、これがさっきのじいさんの知り合いとかいう海神の家だな」 そのとき、中から内気そうな侍女が出てきました。 山幸彦はとっさに井戸のそばにあった桂の木の陰に隠れましたが、侍女は井戸のほうに来るようです。玉(ぎょく)の器を持っているところを見ると、水を汲みに来たのでしょう。 「あ!」 侍女は山幸彦を見つけてしまいました。 「水をくれ」 山幸彦はとっさにウソをつきました。 侍女が器に水を入れて差し出すと、山幸彦は身に付けていた勾玉(まがたま)を解いてその中に入れました。 「この家の主人にお願いがあるから、取り次いでほしい」 「はあ?」 侍女がわけがわからないでいると、奥から豊玉彦の娘の豊玉姫(と
山幸彦は浜辺で途方にくれました。 ワナにかかって苦しんでいた雁(がん)がいたので、逃がしてやりました。 「クワッ!クワッ!」 喜んで飛び去っていく雁を見て、一瞬だけ笑顔になりましたが、 「はあ……」 現実を思い出して泣いてしまいました。 「うわーん!とーすればいいんだ~」 そこへ白髪白ヒゲの老人がやって来ました。 「どうした?ニーチャン」 山幸彦は元気がない理由を話しました。 老人はうなずきました。 「そういうことなら、わしの知り合いが解決してくれるじゃろう」 「知り合い?」 「ああ。海神(わたつみ・わだつみ)だ。この竹のかごに入りなさい」 「ワタツミ?おじいさんはいったいナニモノなんですか?」 山幸彦は疑いつつもかごに入りました。 「人はわしを塩土老翁と呼ぶ」 塩土老翁はうんしょと山幸彦の入ったかごを担ぐと、海沿いのがけの上まで運びました。 眼下はすぐ海です。山幸彦は波しぶきを受けて不安
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