世紀末の病弱崇拝、でも… この違和感がもっとはっきりしたのは、大学院に入ってオスカー・ワイルドなどを学ぶようになり、カリフォルニア大学サンディエゴ校で教えていたブラム・ダイクストラの『倒錯の偶像――世紀末幻想としての女性悪』を読んだ時です。既に一度この連載に登場していますが、『倒錯の偶像』は世紀末文化のミソジニーを批判した大著です。この本の第2章はそのものずばり「病弱崇拝、オフィーリアと愚行、死女と物神化する眠り」というタイトルで、世紀末の病弱崇拝がいかに女性を貶めるものだったかということを書いています。ダイクストラは19世紀頃の、弱く病気がちであることこそ女性らしさだと考え、女性の活動を否定する傾向をこのようにまとめています。 当時の神話においては以前にも増して、標準的な健康状態さえもが――女性の「人並み外れた」肉体的活力はいうに及ばず――危険な男性化を示す態度と結びつけて考えられ始めて