あれは昨年、12月上旬のことだった。 J1記録である同一シーズン12連勝や史上最速優勝を達成するなど、圧倒的な強さでリーグを制した川崎フロンターレ。紛れもなく、そのチームの中心にいた田中碧から思いがけない言葉が返ってきた。 「中盤戦以降は自分のプレーが良かったと感じられる試合が1つもなかったですね」 チームの結果とは裏腹に、田中は失意のどん底にいた。ピッチを縦横無尽に走り回りながら攻守のつなぎ目としてボールにかかわり、球際の強さを披露して守備面でも存在感を発揮する。得点やアシストも記録するなど、前年から比べると大きな進歩を遂げているようにも思えた。 ただ、田中本人にとっては「終わって自分の採点を見ると6.0を付けられているんですけど、やっている自分からしたら5.0、4.5」という自己評価だった。 チームが勝ち星を重ねる中で、自分が勝利に貢献できている手応えがない。アンカーでプレーしていても