1980年代にコロナ禍を予測したような日本のSF小説作品があった。 大原まり子『薄幸の町で』。 去年くらいにもこの作品世界が予言的だとSFファンのツイッターで少し話題になった。 80年代前半といえば、ウィリアム・ギブスンが『ニューロマンサー』を出した少し後くらいで、日本でも神林長平、柾悟郎といったハードSF的なリアリティのベースになる知識も豊富なうえでそれまでにない繊細な感性を言語化するあらたな才能が頭角を現してきた頃だ。 大原まり子もそのムーブメントの中心にいて、詩的かつひりつくようなリアリティが持ち味だった。 連作である『有楽町のカフェーで』の中で作家志望の男の子目線で語られるとてもしあわせそうな女友達との関係が、『薄幸の町で』の中では致死性の感染症で一度も触れ合うことのないまま終わってしまう。 アメリカはもう死んでしまった。 ヨーロッパ各国も。 オーストラリア、中国も。ソヴィエトも半
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