まさか30代も後半になってから、工場で肉体労働するはめになるとは想像もしてなかった。 中高生の頃はホワイトカラーの、デスクワークを将来するものだと疑わずに過ごしていた。 それが男女関係のいろいろな事情によってそういう仕事に突かざるをえなくなって、案外と悪くない環境だと気がついた。 工場自体は製品を低コスト短納期で製造するためにあるので設備は無骨で人間味は感じ難い。 自分も初めて入場した日には、こんな砂漠みたいな場所で毎日を過ごすのは耐えられないだろうと思っていた。 でも休憩室の何十年使い込まれた天然木の机だとか、ロッカーの中を使いやすくするための手作りの棚だとか、違う部署同士の仲の悪さだとか、工場の中の人間臭さに気づいてからはぐっと過ごしやすくなった。 2年も過ぎると、合理的なはずの倉庫の配置や配管の取り廻しにも積年のその場しのぎと後悔がそこここに感じられるようになって、職場への愛着が日々