一九五二年十一月二日、秋田県大曲町立(現大仙市立)大曲小学校の裏の田んぼで、野良着姿の女性たちがカメラのレンズを向けられていた。第一回秋田県おばこコンクールの入賞者たちだ。ファインダーをのぞくカメラマンの中に買ったばかりのミノルタ35に45ミリのレンズをつけた二十八歳の高校教師・大野源二郎(98)の姿があった。 大野はこのときの一枚を「国際写真サロン」に応募し、入選を果たす。写真は「アサヒカメラ」に載り、日本を代表する写真家の目に留まった。木村伊兵衛(一九〇一〜七四年)だ。 折しも木村は、秋田で農村などの撮影を始めたばかり。たっての希望で、同じ女性を撮ることになった。五三年五月と八月に大曲を訪れて撮った。代表作「秋田おばこ」は、八月の撮影だ。人物撮影は斜めからの光で立体感を出すのが鉄則と習ったが、木村は「半逆光で撮った」(「秋田さきがけ」での大野の回想)。大丈夫かと思ったが、できた写真は見