「蕩し」という言葉がある。 「たらし」と読む。巧みな言葉や行動で、相手の心を魅了し、自分のことを好きにさせてしまうことを意味する。甘言を用いて女性を誘惑する「女たらし」という言葉もある。 『人蕩し術』は、ターゲットが人になる。自分を好きにさせる原理と実践が書いてある。「思いのままにヒトを虜(とりこ)にする」という宣伝文句がちょっとアヤしいが、中身といえば、まっとうというか王道そのもの。 企業や社会で成功する人には、共通したところがあるという。それは、「自分の周りに良い味方がいる」という点だ。本書は、豊臣秀吉や本田宗一郎の例を挙げ、人心の機微を察して魅了する「人蕩し術」に秀でたものこそが、成功のカギだという。 確かにその通りかもしれぬ。周囲を見回してみると、出世する人や成功する人は、人望が篤く、社内外の強力なネットワークがある人ばかりだ。もちろん「仕事ができる」は必須だが、そこからさらに上に