●池波正太郎と神田・連雀町を歩く 初版2001年2月17日 <V01L06> 二版2013年5月27日 <V01L01> 万惣(まんそう)が閉店しました。 今回は池波正太郎の「むかしの味」「散歩のとき何か食べたくなって」に沿って神田・連雀町を歩いてみたいと思います。現在の地名で言うと神田・連雀町は万世橋と神田・須田町一丁目、淡路町二丁目に囲まれた界隈です。 <[甘味処]竹むら> 「火盗改メ・同心の木村忠吾は、足袋屋善四郎の留守をさいわい、新堀端の竜宝寺門前までお雪をよび出し、松月庵という〔しる粉屋〕で逢引をしていた。当時の〔しる粉屋〕というやつ、現代の〔同伴喫茶〕のようなもので、甘味一点張りと思いのほか、ところによっては男客のために酒もつけようという……松月庵の奥庭に面した小座敷で、早くも木村忠吾、桃の花片のようなお雪のくちびるを丹念に吸いながら、八つ口から手をさし入れ、固く張ったむすめの