二人の連名の表札をつけた自宅の前に立つ小池幸夫さん(左)と内山由香里さん=長野県箕輪町で2024年9月9日午後5時59分、深津誠撮影 思いもよらぬ言葉に、動揺した。 両親に結婚を伝えるため、婚約者の女性を乗せて実家へ車を走らせていたときのことだ。 助手席にいた10歳下の女性は、ふいに「別姓に、事実婚にしたい」と切り出してきた。 結婚といえば、夫の名字になるのが当たり前で、もし妻の名字になれば、それは「婿入り」という感覚だった。 そんなことを言ったら、両親に猛反対される。このままでは紹介できない……。 車を路肩に止め、女性に言った。 「この話は、いったん無かったことにしようか」。思わず婚約破棄を口走っていた。 「家を継ぐ」意識 長野県立高校の元教諭、小池幸夫さん(66)は、33歳で起きたこの出来事をはっきりと覚えている。 中央アルプスと南アルプスに挟まれた伊那谷にある長野県箕輪町で生まれ育っ