【感想】 心が痛い。ページを1枚ずつめくるごとに、やり場のない悲しみが押し寄せてくる。虐待者から逃れたあとも、まだ悲劇が終わらないとは。残りの人生でこんなにも過酷な時間を過ごさなければならないとは。 本書は、里親や施設のスタッフ、被虐待者本人から聞き取りを行い、「虐待の後遺症」について論じていく本である。 「虐待の後遺症」とは、虐待者から逃れた後も、暴力によるPTSDやうつといった症状に苛まれ、再び問題行動を起こしてしまうことである。私たちの感性からすると、虐待者から保護された子どもは、施設や里親の手によって暴力のない平和な生活を営むことができる、と考えるのではないだろうか。しかし、心の傷が元通りになるのには相当な時間がかかり、なかには大人になっても完治しないケースもある。乳幼児期という人格の形成期間に養育者から暴力・育児放棄を受けることで、社会性が身につくことなく成長してしまうからだ。
![『誕生日を知らない女の子 虐待――その後の子どもたち』(黒川祥子)の感想(90レビュー) - ブクログ](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/5d2614e1422e726a6dae86ca656f0fd537c442ff/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fm.media-amazon.com%2Fimages%2FI%2F417BmDWGaHL._SL500_.jpg)