●グラフィックデザイナーの杉浦康平氏といえば、写植システムメーカーである写研と共にタイポグラフィの実験を繰り広げる一方、曼荼羅を一対の本に仕立てたり、また孔の空いた『人間人形時代』、天文学者と共に『立体で見る星の本』を制作するなど、斬新な発想で日本のエディトリアル・デザインを牽引してきた第一人者である。 ●杉浦氏が力を注いできたテーマに「アジア」がある。造本のみならず、著者でもある「万物照応劇場」シリーズは、1993年三省堂書店『日本のかたち・アジアのカタチ』にはじまり、NHK出版『かたち誕生』、『生命の樹・花宇宙』、講談社『宇宙を呑む』が刊行され、アジアの宇宙観を鮮やかに描き出している。 ●版元を超えながら表紙デザインを統一し、あふれんばかりの図像が散りばめられ、デザインの可能性と豊かさを味わえる贅沢な造本。昨今のアジアの出版興隆を背景に、韓国、台湾、中国にも翻訳進出を果たしている。 ●