相手との距離をとろうとする人間関係のありかたや、「人それぞれ」の社会に隠れた息苦しさ――『「人それぞれ」がさみしい』(石田光規著、ちくまプリマー新書)を、精神科医の熊代亨さんに読み解いていただきました。(初出:「ちくま」2022年2月号) 「みんなちがって、みんないい」「人それぞれ」──個人を尊重し、多様性を意識しあう令和の風潮のなかで、これらは肯定的な言葉とみなされるし、実際、これらの言葉どおりにひとりひとりの生き方は保障されている。その一方で私たちは孤独を抱え、コミュニケーションに疲弊し、社会的分断を深めていったのではないか。本書はそのように問題提起する。 確かにそうなのだ。「人それぞれ」の時代において、私たちは仕事を、人間関係を、人生を自己選択するようになった。能力的に恵まれた個人なら、自己選択をとおしてまさしく自己実現を果たせるだろう。書店には、そうして自己実現を成し遂げた人々が綴
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