この記事は「nikkei BPnet」に2016年10月31日に掲載された「羽生善治三冠、人間とAIは対局時の「本能」が違う」を転載したものです。内容は基本的に掲載日時点のものとなります。 日本のAI研究第一人者の中島秀之氏と“最強の棋士”と称される羽生善治氏との対談は、「独創的な一手」という話題を契機として、「なぜAIは棋士が指せなかった新手を指せるのか」という議論に発展し、やがてそれは、人間が生来持っていて、現在のAIが持ちえない“本能”という深遠なテーマにつながっていきます。 AIに感情移入できる可能性 羽生善治氏(以下、羽生): 前に孫正義(ソフトバンクグループ社長)さんと話したとき、「100億の人間と100億のAIが暮らす世界」という話が出ました。そういう世界になってしまうと、100億と100億で、民主主義でいうと五分五分ですから、それぞれの意見や意思や気持ちも尊重しなければいけ