1. 導入:数値解析の「万能感」とその死角 我々が常微分方程式(ODE)を数値的に解く際、まず手に取るのはルンゲ=クッタ法(RK法)でしょう。その高い収束次数と安定性は、実務において絶対的な信頼を勝ち得ています。 しかし、この「RK法の万能感」は、ある数学的な「厳しい」制約の中で初めて成立するものです。その条件を満たさないモデルに対してRK法を強行すると、数値解析は全く意味のない「データの並び」へと成り下がります。 1.1 反例: dx/dt = x^2 という系を具体例として、以下の極めて単純な非線形方程式を考えます。 \frac{dx}{dt} = x^2, \quad x(0) = x_0 > 0 この方程式の解析解は、変数分離法によって直ちに次のように求まります。x(t) = \frac{1}{x_0^{-1} - t}この解の挙動を注視してください。分母がゼロになる時刻 t =

