デフレ・ギャップ(需要不足)が存在するときに生産性の改善を図ると、供給能力が増大するので、さらにデフレ・ギャップが拡大することになる(だから、生産性の向上につながるようなことはすべきでない)というようなことを言う人がいる。そして、こうした主張をもっともらしく受け止めてしまう人達も、意外に少なくないようである。数年前に、私自身も当時政府の要職にあった政治家から、「労働生産性の引き上げを図ると、かえって失業が増えてしまうのではないですか」という質問を受けたことがある。 上記のような議論では、「需要」と「供給」を完全に別々のものとしてとらえていて、供給(能力)が変化しても、需要は一定のままで変わらないと(暗黙に)想定されている。しかし、そうした想定は正しくない。 大学の経済学部に入学すると、一番最初の頃に「国民所得の三面等価」という話を習うことになる。売り上げから経費を引いたものが人々の収入にな