明らかにいつもと違った目つきになっていた。ラウンドを重ねるごとに、あのビッグマウスの面影は薄れ、自分のコーナーに戻ってくる目つきはうつろ。あるいは恐怖さえ浮かんでいた。今までの試合と決定的に何かが違う。 ファン・ランダエタの老練なテクニック。ガードしてもしてもその間を潜り抜けてくる確実なヒット。固めても固めても叩かれるボディ。一方で自分が時折繰り出すワンツーは、ことごとく相手にガードされて届かない。 亀田の目には明らかに恐怖が浮かんでいた。 とにかくビッグマウスでここまで注目を浴びてきたクソガキである。ボクシング素人の父親が、ヤンキーな子供たちに施した独自のトレーニングにマスコミが飛びついた。それに一家そろってのビッグマウスぶりが、話題を煽った。 どこかで皆、亀田の真の実力に不安を覚えていたのだが、それを言うのにはばかられる雰囲気があった。 それに、何といわれようと、あの一家は底抜けに自由