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ブックマーク / lleedd.com (52)

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » チタンに見る夢

    チタンという金属はとても貴重なものだと思われています。でも実は、地球の表面付近にある元素では9番目に多い元素で、銅の百倍ぐらいあるんだとか。チタンは金属の中でも特に非強度が高く(軽くて強い)、硬いのに折れにくく、酸にも強く、海辺にあっても錆びない、人の肌に触れてもアレルギーを起こさないなど、いわゆる生活用品や建材として最適の特性を備えた、金属の優等生です。にもかかわらずご存知のように、使われているのは高級時計やゴルフのヘッド、航空機の部品など、高級品や高機能部品ばかり。理由は高価だから。ふんだんにあるのになぜ高価なのでしょう。 問題は作るのが難しいということです。自然界には酸素をはじめ他の元素と非常に強固に結びついた状態で存在するため、引きはがして純チタンにしようとするとエネルギーを大量に使います。ようやく純チタンを手に入れても、硬くて粘りがあるので削るのも曲げるのも難しく、高熱では酸素や

    山中俊治の「デザインの骨格」 » チタンに見る夢
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    s1090018 2014/10/27
  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 面白くなることだけは間違いない

    報告が遅くなりましたが、4月1日から東京大学生産技術研究所の教授となりました。 ことの始まりは、昨年の秋にある人が訪ねて来て「東京大学にデザインをもたらして欲しい」と依頼されたことでした。今の日にはデザインの力がとても重要なのは明らかなのに、東京大学にはその確固たる拠点がないと。 2008年に私は、慶應義塾大学の若手の研究者達に呼ばれて、SFC(湘南藤沢キャンパス)の教授に着任しました。そして、「人と人工物の間に起こること全て」を、工学も芸術も社会学も総動員してデザインする研究グループ、X-DESIGNを彼らと共に立ち上げました。幸いなことに就任してすぐ、たくさんの学生達が私の元に集まってくれ、彼らと共に義足アスリート達に出会い、「骨」展を主催し、少しずつ実験的なものを作り始めました。それから5年、素晴らしい仲間と学生を得て、ある程度の成果を発信できるようになったと実感しています。 まさ

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    s1090018 2013/06/11
  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » ダイオウイカの巨大な目

    世界で初めて、深海のダイオウイカが撮影されて話題になりました。多くの人が驚愕したのがそのぎょろりとした目。ある意味人間のようでもあったのですが、一方で、どこかこちらを認識しているようには思えない違和感もありました。 学術的にも、ダイオウイカの目は大きな謎だそうです。バスケットボールほどにもなると言われているその巨大な目は、画素数も多く、色彩に対しても敏感に反応することが知られています。だからこそ疑問がわくのです。こんなに高性能な目を持っていても、そもそもその情報を処理する脳が貧弱過ぎるじゃないかと。 地上には太陽の光があふれていて様々なものが色彩豊かにその光を反射するので、高解像度の目を持つことはそのまま情報量が多いことを意味します。それを解釈する脳が優れていれば、見えているものが物であるか敵であるか、周囲の環境がどう変わるかなど、私たちの生存に関わる重要な情報が刻々と得られます。しかし

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    s1090018 2013/01/16
  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 誤差の話

    小さな差が積み重なって思わぬ大きな差になることはよくあることですが、モノを作るときにも寸法誤差の積み重ねは、とても重要な意味を持ちます。 例えば、カステラがきっちり入る桐の箱を作ることを想像してみましょう。理想は隙間なくぴったり納まることですが、人の手が作るものでは、なかなかそうはなりません。カステラを切るときに、菓子職人さんがどんなにがんばっても最大1ミリの誤差は防げないとしましょう。一方、箱職人さんが作る桐の箱も±1ミリぐらいの誤差は出るとします。どちらも20センチで作ってくれと依頼しても、201ミリになったり199ミリになったりする可能性があるということです。 さて、カステラが箱に入らないという困った状況にならないためには、それぞれの職人さんにどのように依頼すればいいのでしょうか。答えは、箱をカステラより2ミリ大きく(箱は201ミリ、カステラは199ミリに)作ってくれと依頼することで

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    s1090018 2012/12/13
  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 映像制作、ついてに飛行機もデザインしちゃいました。その2

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    s1090018 2012/10/20
  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 映像制作、ついでに飛行機もデザインしちゃいました。その1

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    s1090018 2012/10/15
  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » パラリンピックの熱狂

    記憶が新しいうちに、パラリンピックの観戦について少しばかり感想を記録しておこうと思います。 メインスタジアムがあるストラットフォードの駅に着いた時から、膨大な人の列に驚きました。それをジョークを交えながら誘導し、盛り上げる案内係の人たち。顔に英国旗をプリントして気勢を上げながら歩く若者達。その中を楽しそうに進む障害を持った人たち。巨大なスタジアム周りの空間演出にもわくわくしながら会場に入った私と学生達を出迎えたものは、圧倒的な大観衆でした。オリンピックスタジアムは8万人が収容できるのですが、それがびっしりと満員なのです。 会場アナウンスが、これから出場する選手の個性を、パラリンピック独特の複雑なクラス分けと一緒にとてもわかりやすく紹介します。その度に熱狂的な拍手と大歓声。そして自然に起こるウェーブ。日の障害者スポーツ大会のがらんとした観客席に慣れてしまっていた私と学生達はこれだけでもう涙

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    s1090018 2012/09/24
  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 本を書くということ

    ここの所ずっと書籍の原稿に追われていたので、ブログを更新することができませんでした。しかし、ようやく書き終わりつつあります。完成間近ののタイトルは、「カーボン・アスリート  —美しい義足に描く夢」。この3年間ずっとやってきた義足デザインプロジェクトの活動記録です。 自分は文章がうまいとは決して思いませんが、多くの人が読みやすいと言ってくれます。しかしそもそも、文章の読みやすさとは何でしょうか。 小説家の平野啓一郎さんは、「小説を売ろうとすると結局はマーケティングの話にしかならないけれど、小説にデザインの発想を導入することで新しい書き方ができるのではないか。」と提言しています。純文学として読者に伝えたい重たいテーマには、今の読者はなかなかじっくりとつきあってくれなくなっているので、リーダビリティということ念頭に置いて小説をデザインしているそうです。 これは面白い考え方だと思いました。製品デ

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    s1090018 2012/06/01
  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 楽器の中の部屋

    楽器の演奏については全く不調法なのでハードルが高いのですが、デザイナーとして楽器の、特にアコースティックな楽器の構造が好きです。 先日、楽器の内部構造を建築写真のように撮影した一連の写真を知りました。Bjoern Ewersという写真家による、ベルリンフィル室内楽オーケストラのキャンペーンポスターらしいのですが、楽器の内部空間の魅力をこれまでにない方法で見せてくれる写真に、強い感銘を受けました。 生の音を奏でる楽器の多くは、共鳴のための空間を内部に持っています。弦やリードの振動によって生まれた音は、その空間の中を様々に伝わりながら、より力強く美しく醸成されて、音色となります。一連の写真は、その共鳴箱を建築のインテリアにみたてて、音の出入り口から差し込む光で撮影するというアイデアが秀逸。高解像度のファイバースコープで撮影したのでしょうか、見ていると美しい音が聞こえてきそうです。 バイオリンの

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 車輪を持った生き物

    自転車のすばらしい移動効率を考えると、車輪を持った生き物がいないのは、やっぱり不思議。” 昨年末に私がこんなことをつぶやいたのがきっかけで、生物が車輪を持っていないのは何故かということについてツイッター上で議論が盛り上がりました。 血管がある生き物には360度以上回転する部位を持つことは構造上難しいとか、車輪は直径の1/4以上の段差は登ることができないので、でこぼこの世界に住む小さな生物には意味がないとか、車輪を持てなかった理由について様々な意見をいただきました。一方で、どういう構造であれば既存の生物たちの進化の可能性の中で車輪が持てるかを考えてみるのは面白そうだということになり、いろいろなアイデアも登場しました。その議論については pseudotaro さんがtogetterにまとめてくれたので是非ご覧ください。 生物は進化の過程で車輪をなぜ持たなかったか 山中俊治さんを中心とした会話

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    s1090018 2012/02/11
  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 有人小惑星探査船 その3

    宇宙船デザインの話の第3回、これで最後です。 探査船のサイズや形は、全体の行程と密接に関わっています。最初に選定した行き先候補である3つの小惑星それぞれに、必要な燃料の量がかなり違うので一概には言えませんが、中央の居住区は直径約10m、タンクを含めた直径は小さくても約30mになりそうです。構造質量だけで数十トン、燃料を含めた出発時重量は数百トンのかなり巨大な宇宙船です。 ミッション開始にあたっては、まず、たくさんのロケットで繰り返し部品や推進剤タンクが打ち上げられ、軌道上で組み立てられます。最後に乗員も打ち上げられ、完成した居住区に乗り込み、いよいよメインエンジンが点火されて出発。フル加速で(といってもせいぜい1Gで数分、0.3Gで数十分ですが)地球軌道を脱します。 空になったタンクは、航行の各段階ごとに捨てられて行きます。タンクだけでなく、最終的にはこの宇宙船はその大部分を宇宙に放棄して

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    s1090018 2012/01/04
  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 有人小惑星探査船 その2

    引き続いて有人小惑星探査船のデザインのお話。 この宇宙船のデザインに特徴的なのは、中央の居住区を放射状に取り囲んだ推進剤タンクです。話題となった無人探査機ハヤブサは、とても少ない燃料(推進剤)で時間をかけて小惑星イトカワまで往復しました(7年もかかったのは予定外ですが)。しかし有人機では、過酷な宇宙空間に人が滞在する時間をできるだけ短くする必要があります。そのために膨大な小惑星を精査して、最短で行ける目標を選んだのですが、それでもかなり加速してスピードを上げて航行し、ブレーキ(とはいえ、加減速とも1G以下ですが)をかけて小惑星にランデブーすることになります。宇宙では加速にも減速にも膨大な推進剤を使うので、出発時の船体は推進剤タンクの固まりのようになります。 これをデザインするにあたって、最初は学生たちと一緒に、いわゆる「宇宙船」っぽいスケッチを描いていたのですが、何度も野田さんからダメ出し

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    s1090018 2012/01/04
  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 有人小惑星探査船 その1

    2012年の最初のエントリーは初夢っぽく、慶應SFCで研究してきた有人小惑星探査船の話をします。長い夢物語になるので3回に分けてアップしたいと思います。 きっかけはアーティストの八谷さんから私宛のツイッターでした。宇宙機のデザインに興味を持っている航空宇宙関係の技術者を紹介したいと(「航空宇宙のデザイン始めます」参照)。その人は野田篤司さん。過去にいくつも実現した衛星プロジェクトを指揮してきた高名な技術者です。その方が「カッコイイ宇宙機」を作りたいという夢をずっと持っているというのです。実際にお会いしてすっかり意気投合してしまいました。それから1年半以上、「美しい宇宙船」を作ることの意味と可能性について議論を重ねています。 そのツイッターのやり取りを見て声をかけてくれた雑誌の編集者さんがいました。講談社コミックモーニングの佐渡島庸平さん。佐渡島さんが担当しているマンガ「宇宙兄弟」のムック

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    s1090018 2012/01/03
  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 気がついたら「豪華すぎるトークショー」になっていた件

    11月23日にこんなトークショーがあります。 出演者は、あいうえお順で 不思議な金属生物のような楽器を使って、世界のあちこちで前衛的なパフォーマンスを行い、大ヒットしたオタマトーンなどの不思議な製品を作り続ける明和電機社長の土佐信道さん ユニクロやAUなどのクールなウェブをデザインし、インフォバー2の操作画面をデザインし、「デザインあ」などの番組も手がけるインターフェースデザイナーの中村勇吾さん JAXAで様々な衛星の開発に携わる一方で、フィクションの技術考証によりコアなSFファンの間でも「野田司令」の愛称で知られる宇宙機エンジニアの野田篤司さん 「日蝕」により23歳という若さで芥川賞を受賞し、その後も「葬送」「決壊」「ドーン」など幅広い小説を書き続け、コミックモーニングでも「空白を満たしなさい」を連載中の小説家、平野啓一郎さん とても忙しい方々なので、出演を依頼したときには、きっとお一人

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    s1090018 2011/11/21
  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 「失われたものの補完」を超えて

    写真は、開発中の女性用義足のモックアップです。現時点ではあくまでもイメージモデルであり、まだこれで歩くことはできませんが、これをトリガーとして開発を進めようとしています。開発に協力してくれている女性は、板バネの義足を使って走るアスリート。きれいな人なので、足を作るのも緊張します。 義足は紀元前の昔から作られてきました。ただの棒のような物も多く使われて来ましたが、一方で、常に物に似せるべく芸術品に近い物も製作されました。義足は失われた下肢を補完するものであり、その目的には、歩行機能の回復だけでなく外観の回復も含まれているのです。 作り方が近代化したのは第一次世界大戦直後。大量の傷病兵に対応しなければならなったヨーロッパで、それまではひとつ一つ手作りだった義足製作がシステム化されます。パーツはモジュール化され、金属パイプと量産の接続パーツを組み合わせて、低コストで大量に作られるようになりまし

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    s1090018 2011/11/14
  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » パリで見つけた毛細管現象

    海外の都市を歩くときの楽しみのひとつは、文具屋さんを訪れることです。文房具は単価が安すぎるアイテムや、日で使う習慣のない道具は輸入されないので、その国独特の文字や紙の文化に触れることができます。 先日のパリ滞在中も、何度も文房具屋に足を運びました。やはりペンの国ですね。当にいろいろな形のペンがあり、そのひとつ一つが個性的で美しい。日ではGペン、かぶらペンぐらいの種類しかなく、メーカーが違っても形はほとんど同じですが、パリのペンは、それぞれの形に個性があり、ひとつ一つの書き味が違うのです。その品揃えの豊富さは、日の毛筆店そっくり。欧米人が日の書道用の筆を見れば、同じようにそのバリエーションに驚くのでしょう。 ペンも毛筆も、墨液に先端を浸けて一度含ませてから書くのは同じです。どちらも液体が隙間に入り込もうとする性質、毛細管現象を使って基の方に墨液を保持し、巧みに先端に送り出します。

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    s1090018 2011/10/31
  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » ぐっばい。スティーブ・ジョブズ

    会いたいと思っていた人に、結局、会えないまま終わってしまった。悲しいのかどうかさえわからないが、確かな喪失感がある。 スタンフォードの卒業式での伝説的なスピーチは、iPodでいつも聞いていた。 Connecting dotsという美しい響きの言葉から始まる「過去から見れば、ばらばらにしか見えないことも、未来から振り返って見れば見事につながっている」という一節を聞いては、行き当たりばったりだった自分の若い頃を思い、それをつなげてみた。 「私は偉大なタイポグラフィーが偉大たる所以を学んだ…」というくだりに込められた繊細なものへの愛が好きだった。 「毎日今日が最後の日だと思って生きれば、ある日それは当になる」には笑った。 「君たちの時間は限られてる。人生を無駄にしては行けない…」以下の言葉にはいつも奮い立たされた。 こんなに何度も何度も聞いたスピーチは他にない。部分的に暗唱できるほどだ。このス

  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » パリの蚤の市にて

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    s1090018 2011/10/05
  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » 初めてのルーブル

    ルーブル美術館という世界で最も有名な美術館に、初めて行ってきました。何度かパリには来ているのですが、「丸3日はかかる」とか「人類の至宝」とか、そんな重たい言葉に気後れして、何となく見送ってきたのです。今回、仕事でパリにひと月滞在する機会ができたので、ふらりと行ってみました。 で、一番感動したのは、いまさらですが、写真の「サモトラケのニケ」。撮影が許可されている美術館での楽しみのひとつは、彫刻の写真を撮る事です。絵画は、自分で撮るより遥かに再現性の高い写真が出回っているので、あらためて自分で撮る意味を感じないのですが、彫刻は自分で動き回って、自分が一番快感を感じるアングルを記録する事ができます。ニケはどこから撮影しても絵になるのですが、私の萌えアングルは後ろ姿でした。 この彫像がなんでこんなにかっこいいのかと言えば、それはもう、首やら手やらをもぎ取ってくれた偶然のすばらしさにつきます。人の体

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    s1090018 2011/09/22
  • 山中俊治の「デザインの骨格」 » ジェームズダイソンアワードのお知らせ

    今年の夏は、ダイソンの羽根のない扇風機がたいへん良く売れているそうですが、そのダイソン社の創業者である、ジェームズ・ダイソンの名を冠した国際アイデアコンテスト(デザインコンペ)をご存じでしょうか。その名も「James Dyson Award 」。実は今年から私がこのコンペの審査をお手伝いすることになりました。 このコンテストの第1の特徴は、テーマが毎年同じで「問題を解決するデザイン」であること。デザイナーでもあり発明家、起業家でもあるジェームズダイソン氏は、美的センスと技術センスの両方をもつ人材を、デザイン・エンジニアと呼びます。まさにこのコンテストは未来のデザイン・エンジニアのためのデザインコンペ。「ちょっとかわいいかも」とか「こんなのあってもいいでしょ」というようなアイデアではなく、「この問題を解決しました」という硬派なアイデアを求めています。 もう一つの特徴は応募資格。「現在または過

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    s1090018 2011/07/15